中仕上げ砥石で研ぐ - 顕微鏡解析3
砥石の違いを検証するべく、刃物を実際に研いで、顕微鏡で観察しようという企画です(中仕上げ砥石編)
本来は和包丁を使いたかったのですが、鍛造刃物の代用として
比不倉鉋の刃を使用しました。
(切刃面積が小さく、短時間で研ぎ上がるため)
企画趣旨や刃物の詳細、検証ポイント等については、
企画・テストの趣旨、条件をご覧ください
(このページでは割愛します)
この中仕上げ砥石編では、1500~5000番の範囲を対象とし、2本の砥石をテストします。
それではまず、研ぎ上がりの刃の状態から見ていきましょう。
刃の仕上がり・研ぎ目
刃の黒幕 グリーン#2000番
刃の黒幕グリーン #2000番の研ぎ目です。
キングハイパー
#2000番
刃の黒幕オレンジ #1000番に比べると、ハガネ部分に黒っぽい深みのある感じが出てきました。
軟鉄の部分も若干黒みがかっています。
実際の色味が黒くなっているのではなく、光の反射が一定方向に揃っているため、このような色感に見えています。
この砥石は砥泥の出が少ないため、砥粒の剥がれも少なく、砥泥の色がかなり黒褐色となっています
平面維持度が高く、カンナやノミを研ぐ方に好評の砥石ですが、頷けるところです。
スエヒロ 黄華 #3000番
スエヒロ(末広) 黄華 #3000番の研ぎ目です。
地金は基本的にマットな質感で曇りますが、光の反射によっては部分的にギラつく感じも出ています。
ギラ付き感が出ているのは、WA砥粒の切れ込みの良さが影響していますが、一方ではねずみ色によく曇るという相反する特性が感じられます。
この曇り特性は、砥石自体が適度な固さでソフトな当たり具合である事と、ビトリファイド系(焼結型)の影響が大きいようです。
砥泥の出具合は良好で、砥泥を積極的に活かして研ぎ上げる人には嬉しい砥石です。
使い心地も安定しており、経年による変化がほとんどありません。
WA(ホワイトアランダム)砥粒は切削性が良く、鋼材に良く食いつきます。
よく削れる一方で、相対的に深い削れ跡が生じますので、(3000番以下の粒度では)ギラつき感が目立つ場合もあります。
焼結型のビトリファイド砥石は、研ぎ溝の深さが(良い意味で)ばらつきやすく、結果的に光が乱反射して曇った仕上がりになる傾向があります。
顕微鏡で解析
それでは、顕微鏡で撮影した画像を見てみましょう。
刃の黒幕 グリーン #2000番
『刃の黒幕 グリーン #2000番』で研いだ刃物の、顕微鏡画像です。
ナニワ 青砥石
#2000番
番手(粒度)は2000番ということになっていますが、こうやって見ると意外に粗いなという印象です。
刃筋と際のところを見るとわかりますが、かなり大きめのカエリが出ており、エッジ部分の「めくれ」が顕著です。
この研ぎテストではカエリを取らず、カエリが出たままの状態で撮影しています。
刃の黒幕オレンジも、1000番としては粗めという印象を受けましたが、どうやら2000番も同様の傾向のようです。
(他社の同番手製品と比較すると、相対的に目が粗いと感じられます)
スエヒロ 黄華 #3000番
『スエヒロ 黄華 #3000番』で研いだ刃物の、顕微鏡画像です。
焼結型(焼成法)の砥石だけあって、顕微鏡画像でも表面のギラつきが少なく、マットな質感を見せています。
研ぎ溝も1000番代の中砥石と比べると充分に細く、3000番らしい目の細かな砥粒であることがうかがえます。
一方で刃筋の際を見てみると、微細なノコギリ状の刃がくっきりと形成されており、刃がかかりの良い刃に仕上がっていることが判ります。
砥石表面 顕微鏡画像
砥石の表面を顕微鏡で撮影した画像です。
表面の質感と凹凸(粗さ)を観察することができます。
刃の黒幕 グリーン #2000番
『刃の黒幕 グリーン #2000番』砥石表面の、顕微鏡画像です。
予想通り、粒径サイズが(2000番としては)大きめです。
刃の黒幕は『切削力が高くて刃をよくおろす』と評判ですが、他社製品よりも目が粗いのであれば、「切削力が高くて当然」と言うこともできます。
参考までに剛研輝#1000番の画像を下に掲載しますが、粒子の大きさを見る限りでは、刃の黒幕2000の方が粒径が大きいようにも思えます。
(表面粗さでは剛研輝1000の方が粗く見えます)
『剛研輝 #1000番』砥石表面の、顕微鏡画像です。
黄華 #3000番
『スエヒロ 黄華 #3000番』砥石表面の、顕微鏡画像です。
焼成タイプの砥石ですので、ところどころに砥粒の剥がれた穴ぼこが見て取れます。
画面左の方では研ぎ傷が斜めに走っているのが判りますが、溝の付き方からも、適度な硬度でカチカチに固い砥石でないということが、このことからも読み取れます。
実に3000番らしい表面粗さのテクスチャーとなっています。
キング F-3
#4000番
砥石表面の顕微鏡画像ですが、粒子の凹凸が判りやすいように撮影しています
(かなり試行錯誤しました)
ただ単に顕微鏡を当てて撮影しただけでは、凹凸が判らないのっぺりした絵面しが映らない場合もあります
砥石の結合剤の違いや、粒度・番手にも影響されます
包丁研ぎと同じで何度も何度も繰り返し撮影すると、砥石表面の粒子状テクスチャーが判るような、安定したきれいな画像が撮影できるようになったりもします
中砥石(今回のテスト対象)
今回テストした中仕上げ砥石は、以下の2本です。
このページでは、顕微鏡観察によって、どの程度の研ぎ目が付くのか、表示番手と実際の研ぎ目の差異を検証しました。
砥石の使用感などのインプレは、長くなるので割愛していますが、ご覧になりたい方は、下の画像(もしくは上のテキストリンク)をタップして、「
月寅次郎が使ってレビュー」のページでご閲覧ください。
なお、
実売価格はページ右下の
商品画像下に表示されるようにしていますので、そちらでご確認ください。
(広告ブロッカーをONにしていると、価格も画像も表示されません。広告ブロッカーをOFFにしてお楽しみください)
刃の黒幕 グリーン
刃の黒幕 グリーン
-
会社:シャプトン
-
結合:マグネシアセメント
-
粒度:#2000番(公称)
-
砥材:WA(ホワイトアランダム)
スエヒロ 黄華
スエヒロ 黄華
-
会社:末広(スエヒロ)
-
結合:焼成法(焼結型)
-
粒度:#3000番
-
砥材:WA(ホワイトアランダム)
撮影に使用した顕微鏡
DEPSTECH
WF036 顕微鏡
スマホ/PC対応
2K解像度 WiFi
撮影に使用したポータブル顕微鏡
『DEPSTECH WF036』
撮影時はスマホとWi-Fi接続し、スマホ側のアプリを操作して撮影しています
ピントと光量は本体側で調整
月寅次郎の包丁放談に戻る
包丁の刃を顕微鏡で見る(洋包丁の場合)
月寅次郎が使っている砥石(一覧)
包丁の研ぎ方、砥石、研磨など
月寅次郎の包丁カスタム(DIY作業手順)
月寅次郎プロフィール