セラミック砥石の嘘 - 目次
- セラミック砥石の嘘 (現在のページ)
- セラミック砥石、メーカー公式見解 (ページ2)
- セラミック砥石、メリット・デメリット (ページ3)
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セラミック砥石とは?
セラミック砥石という用語には、本来の定義と、企業方便的な販促用語の、2つの意味合いがあります。
本来の定義
キングデラックス
1000番
本来
セラミック砥石とは、砥石そのものがセラミック組成であるものを指します。
言い方を変えれば、
ビトリファイド製法(焼成法・焼結法)
で作られた砥石が、セラミック砥石です。
※ ビトリファイドとは、英語の"vitrified"にあたり、「陶化した・ガラス化した・焼き締めた」という意味です。
簡単に言うと、
陶器のように焼いて作った砥石がセラミック砥石です。
例を挙げると、松永トイシのキングデラックスや、ナニワ研磨工業の剛研デラックスが、焼成砥石の代表格と言えるでしょう。
いわゆる『赤レンガ』のような砥石がそれにあたりますが、後述の「スエヒロ 黄華」のように、白っぽいセラミック砥石も存在します。
色の違いは、主に使用している砥粒(研磨粒子)によるもので、褐色アルミナ(A砥粒)の砥石は赤レンガ状の色調となり、ホワイトアランダム(WA砥粒)の物は白っぽい色になります。
『あらと君』のように、ピンクアランダム(PA砥粒)の焼成砥石はピンク色をしています。
これらの砥石は、まごうことなきセラミックですので、『セラミック砥石』と呼称しても、何ら問題は生じません。
なぜならば、
セラミックとは「
無機物を加熱処理して焼き固めた焼結体」を指し、上記の砥石も焼結体そのものだからです。
企業方便的な販促用語
このように、セラミック砥石とは、焼成して製造した砥石のことを指すというのが、正しい認識ではありました。
ですが、某砥石メーカーが、
「
セラミック砥石とは、セラミック原料(研磨材)を使用した人造砥石を指す」という謎理論を発動し、マグネシア製法の砥石表面に『セラミック砥石』とプリント表示して販売するようになりました。
言ってみればこれは、商品にプレミアム感を醸し出すための、適当で曖昧な販促用語です。
これだけで済めばまだ良かったのですが、前述の商品はそこそこ売れてしまったため、シェアを取られまいと画策するライバルメーカーは、商品名自体に「セラミック砥石」という文言を入れ込むという暴挙に出てしまいました。
このため現在では、
特定商品のみがセラミック砥石であると、
多数の消費者が誤認するに至っています。
結果的にセラミック砥石という用語は、「本来の定義」と「方便的な販促用語」の、2つの意味合いで混同して使われているのが現状です。
残念なことに、もっぱら後者の誤った意味合いで使われることがほとんどで、消費者の混乱を招いており、困ったことになっています。
これらの用語の混乱は、前述のように砥石メーカーが起因ではありますが、まとめサイトやYouTuberもその一端を担っています。
実際に、「まとめサイト」の「おすすめ砥石のページ」や、アクセス数しか頭にないYouTuberの動画コンテンツなどでは、メーカー販促用語を鵜呑みにし、謳い文句をそのままコンテンツ化しているものがよく見られます。
要はコピペで作った「こたつ記事」です。それらの低質なコンテンツも、これらの誤用に拍車をかけています。
製造法による砥石の3分類
「ビトリファイド製法」や「マグネシウム製法」など、耳慣れない用語が出てきましたので、ここらで砥石の分類にも言及しておきましょう。
(補足的な説明になりますので、興味のない方は読み飛ばしても構いません)
人造砥石を製造方法で分けると、以下の3つに分類されます
-
ビトリファイド系:焼成して固めた陶器状の砥石(別称セラミック砥石)
-
レジノイド系:熱硬化性樹脂を用い、加熱して固めた砥石(レジン系)
-
マグネシア系:マグネシアセメントで硬化させた砥石(セメント系)
※ 他にも電着ダイヤモンド砥石などの特殊な例もありますが、ここでは割愛します
※ 昔はマグネシア砥石を『化学仕上砥石』という名称で販売していた時代がありました。
『化学』とあるのは、セメントの化学反応を利用しているためであり、名称に『仕上』が入っているのは、仕上砥石に適正があったためです。
『化学砥石』というと、ナニワ研磨工業の「エビ印 化学仕上砥石」が代表的な存在ですが、スエヒロ砥石も『化学仕上砥石』という名称の製品を販売していた時期があります。
(「化学○○」という呼び方が先進的な印象を持ち得ていた昭和の高度成長期は、この名称がキャッチーではありましたが、昭和後期に入り、逆にダサく感じられるようになってからは、この名称は廃れていきました)
セラミック砥石を自称する製品
シャプトン 刃の黒幕
刃の黒幕
#1000
刃の黒幕
モス#220
シャプトンが販売している
刃の黒幕は、「セラミック砥石」と称して販売されており、砥石表面にも"
CERAMIC WHETSTONE" との印字プリントがあります。
("CERAMIC" = セラミック、"WHETSTONE" = 砥石、です)
刃の黒幕は、研磨素材が明らかにされていませんが、わたしが実使用して確認した中では、1000番オレンジと2000番グリーンは、ホワイトアランダム(白色溶融アルミナ)が、220番モスはグリーンカーボランダム(炭化ケイ素)が使用されています。
(すべて確認したわけではありませんが、1000番以上はすべてホワイトアランダム砥粒でしょう)
砥粒の種類は個人的な推測ですが、使用感と色味、顕微鏡観察を踏まえて類推しています。これに関しては誰も異論を唱えないと思います。
実際の顕微鏡画像については、以下のページをご参照ください。
● 荒砥石編(ページ下部に砥石表面の拡大画像があります)
● 中砥石編(ページ下部に砥石表面の拡大画像があります)
● 中仕上げ砥石編(ページ下部に砥石表面の拡大画像があります)
ここで着目したいのは、
刃の黒幕#220番モスにも、セラミック砥石の表記がなされていることです。
ナニワ
ニュー大村砥
「
グリーンカーボランダム(炭化ケイ素/GC)砥粒は、セラミックなのでセラミック砥石!」という理論が通用するのであれば、
他社のグリンカーボランダム砥粒の砥石もセラミック砥石ということになります。
…とすると、ナニワ研磨工業の「
ニュー大村砥」も、松永トイシの「
GC角朝日虎」も、立派なセラミック砥石です。
これら2つの砥石は、両方とも昭和の時代からあるロングセラーの荒砥石です。
もちろんこれらは、セラミック砥石と呼ばれてはいません。
ですがシャプトン社の見解を適応すると、このような昔ながらの砥石もセラミック砥石と呼称せざるを得ません
シャプトン Mシリーズ(M5,M15,M24)
刃の黒幕の前モデルである
Mシリーズ(M5、M15、M24)には、商品パッケージや砥石表面に「
セラミック砥石」との表示がなされていました。
この頃のシャプトンは、
「セラミック砥石」という表現を躊躇なく使っていたため、通販サイトでも「セラミック砥石」という表現が多数見受けられます。(現在でもネット上で確認することができます)
当初は特徴的なカバのマークと共に、「セラミック砥石」のプリントが砥石表面になされていましたが、途中から「さすがにこれはマズイ」と感じたのでしょうか、絵柄やプリントの無い製品にマイナーチェンジされていきました。
あれだけ「セラミック砥石」と強調して砥石を販売していたにも関わらず、現在のシャプトン公式サイトでは、
「セラミック砥石」という文言は、ただの一言も確認することができません。
後述のように、シャプトンに対してセラミック砥石の質問をすると、非常に歯切れの悪い回答しか返ってきません。
それと同様に、「公式サイトからは『セラミック砥石』という言葉の痕跡が消されている」という事実が、すべてを物語っているように思えます。
下にシャプトン公式サイトのURLを掲載しますので、よろしければご自分で確認してみて下さい。どこにもセラミック砥石の文字は見つかりません。
「Mシリーズ」は掲載から外されていますし、「刃の黒幕」も商品説明が極めて少なく、いたずらにパケットを消費するイメージ映像ばかりが目に付きます。
ナニワ研磨工業 超セラミックス砥石
ナニワ研磨工業
超セラミックス砥石
ナニワ研磨工業の「
超セラミックス砥石」は、
製品名に「セラミックス」の文字が入っています。
(しかも『超』まで付いています)
この商品も焼成したセラミック組成の砥石ではありません。
刃の黒幕と同様に、水和反応を利用して硬化させたマグネシアセメントでできた砥石であり、研磨力(切削力)や平面維持力の高さを売りにした商品です。
(左の画像の商品です。実売価格が表示されない場合は広告ブロッカーをOFFにしてみてください)
はっきり言ってしまうと、
刃の黒幕の対抗馬として当ててきたと言っても過言ではないでしょう。
ナニワ研磨工業は、松永トイシのキングデラックスに対して剛研デラックス、キングハイパーに対抗して剛研玄人といった具合に、ヒット商品に対して判りやすいライバル商品を出してくる事がよくあります。
セラミック砥石の『嘘』
セラミック砥石の嘘
砥石メーカーが
明かしたくない事実
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月寅次郎が使っている砥石
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