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峰磨きとアゴ磨き - 和包丁のカスタム(薄刃包丁)

最終更新日: 作者:月寅次郎

峰とアゴの内側も鏡面化

鏡面仕上げ・薄刃包丁
細かい部分を丁寧に鏡面に仕上げることで、包丁のグレードが一段と上がります

前ページでは、「平」の研磨を取り上げましたが、このページではアゴの内側と峰を磨いて鏡面に仕上げます

アゴからマチにかけての研磨

アゴの内側も、丁寧に仕上げます

作業手順を簡単に紹介すると…
  1. 耐水ペーパーで、大まかにサビを落とす
  2. 軸付ゴム砥石でグラインダー跡を除去し、面取りを施す
  3. コンパウンドで平滑度を引き上げ、鏡面に仕上げる
 …という具合です

これは見た目だけの処理ではなく、実利もあります
角の立った部分を落とし、丁寧に面取りすることで、指あたりが良くなります
また、包丁洗浄後の拭き取り時においても、布巾がスルスルと抜けて引っ掛からなくなります
グラインダーの溝跡に水分が残留することも無くなります

それでは、実際の作業に移りましょう

錆を落とす

まずは、作業前の状態をよく確認します

和包丁のアゴの面取り(処理前)
入手時、サビ取り前の状態は、このような状態でした
錆が深く入っていて、かなりガタガタです

指が直接当たる部分ですので、握り心地やフィット感に影響します。ここは入念に処理したいポイントです

和包丁のアゴの面取り(サビ取り後)
耐水サンドペーパーで、おおまかに錆を取りました

※ サンドペーパー(耐水研磨紙)の選び方については、
サンドペーパーはどれも同じではありません のページをご覧ください
低品質の研磨紙にはどのようなデメリットがあるか、実例サンプルを上げて赤裸々に解説しています

この段階では表面を薄く削っただけですので、製造時のグラインダー跡が、まだ盛大に残っています
とはいえここまで仕上げれば、柄を付けて刃付けすれば、普通に使える状態です

ミニルーターとゴム砥石で、グラインダー跡を消す

和包丁のアゴの面取り(鏡面化)

PROXXON
ミニルーター
No.28400

ヤナセ
ゴム砥石#80

ゴム砥石と電動工具(プロクソンのミニルーター)を使って研磨し、グラインダーの跡を除去しました
(左の画像の商品です、実売価格が表示されない場合は広告ブロッカーをOFFにしてみてください)
上の画像は、まだコンパウンドをかける前の状態ですので、鏡面と言うほどではありませんが、グラインダーによる研磨痕は除去できており、かなり平滑な面が出ています
ここまで仕上げることができれば、あとは手磨きで簡単にフィニッシュ可能です

なお、ゴム砥石は、#120番、#320番、#600番というように番手を徐々に上げて使用しています
必ずしもこの番手で無ければダメというわけではありません。#80→#120とゴム砥石で仕上げ、後は耐水ペーパーで研磨するのも一つの方法です


ゴム砥石は品質の確かなものを使いましょう(軸径の適合も要確認です!)
以前、モノタロウのプライベートブランド品を使用したことがありますが、砥材の量が少ないのか、研磨効率が非常に悪く、閉口した覚えがあります(サンドペーパーも切れが今ひとつでした)
言うまでもありませんが、メーカー名で検索しても会社のページがヒットしない中華品は「地雷そのもの」だと思って下さい

左上の画像の商品は、ヤナセのゴム砥石ですので安心して使えます(わたしも実際に使っています)
プロクソン純正のゴム砥石も販売されてはいますが、小さい割には高いのでコスパが悪いです

画像のミニルータは、わたしが長年使っているPROXXONの「NO.28400」というモデルで、550gとやや重めですが50Wの強力タイプでトルクも充分です
使用した感想や、ミニルーターの選び方のポイントについては、こちらの ミニルーター - PROXXON(プロクソン) のページをご覧ください

鏡面に磨く

鏡面仕上げ・薄刃包丁

KOYO
サイザー46


ブルーマジック

ウィルソン
超微粒子
コンパウンド

この後は、ミニルーターをそのまま使い、赤棒相当のサイザー46でバフがけして目を細くした後、ブルーマジックで手磨きして鏡面に仕上げ、さらにウィルソン超微粒子を使って光沢の乗りを良くしています
(左の画像の商品です、実売価格が表示されない場合は広告ブロッカーをOFFにしてみてください)
柄を分離した状態で、刃体だけにして研磨していますので、柄に近い根本の部分まできっちり磨き上げることができました

マチの切れ込んだ部分は磨きにくいところですが、手を抜かずに磨き込んでいます
アゴ内側の面取り部分も、ゴム砥石を当てた時とは異なった、てらてらした光沢を乗せることができました

細かい部分に手を抜かずにきっちりと仕上げると、数段上のグレードの包丁のようになってきます
この包丁は、物自体はとても良いものでプロ(本職)向けの商品でもあるため、元々のグレード自体はかなり高いものではあり、本来のグレードに戻ったというべきかもしれません

ブルーマジックの使い方については、別途 ブルーマジック のページで解説していますので、そちらをご覧ください。恐らく日本一詳しい解説ページです(自称ですが、まず間違いないと思います)

アゴ内側の処理

新潟精機
ポリッシング
パウダー
#20000
「平」を鏡面仕上げにした和包丁は、いくらでも販売されていますが、霞の和包丁でアゴの内側まで鏡面に仕立てたものは、ほとんどお目にかかれません(本焼きならありますが、霞の場合はそこまでやらないのが普通です)

ここは目につきにくい部分ですので、美麗に仕上げても製品価格が上がるばかりで、加工費用に対する販売訴求効果が薄いとみなされています

洋包丁においても同様の傾向があり、どのメーカーもアゴの内側については、「いかに手を抜いて(低コストで)、それなりに仕上げるか」というスタンスになっています
少なくとも、「当社の包丁は、アゴの内側までこんなに仕上げがきれいです!」と積極的にアピールしているメーカーは、皆無です

そのため、アゴの内側を美しく仕上げたければ、自分でやる以外にありません。(個人で行う包丁のモディファイとしては、「違いを見せられる部分」です)

包丁 カスタム(アゴ)

上の画像は、ミソノの牛刀(スウェーデン鋼)のアゴの内側を処理した例です
口金の部分も同時に研磨をかけています
(具体的な作業手順は、画像をタップすると該当ページに飛びます)

関孫六10000CL カスタム
こちらは、関孫六10000CLのカスタム事例です。量産品の包丁でも一手間加えることで、ここまで美しく仕上がります
ハンドルは、いつものように「漆塗り」で仕上げています。こちらも画像をタップすると該当ページに飛びます

このように、月寅次郎の包丁カスタムは、アゴの内側まで美麗に仕上げるのが一つのポイントです(他の包丁も、すべてこのクオリティで仕上げています)

● 関連ページ:月寅次郎の包丁カスタム一覧

アゴ内側の「えぐり」

見てわかる通りこの包丁には、アゴの内側が大きめに削り込まれています(個人的にこれを「えぐり」と呼んでいます)

ここにえぐりを入れるというのは、(製造側としては)ひと手間かかる作業です。どちらかというと「えぐり」の無い包丁の方が一般的だとは思います

大きめにえぐりを入れているから良い包丁、高級な包丁、・・・というわけではありませんが、個人的には「この形」が好みです
握り込んだ時の指あたりが良いというのもありますが、マチからアゴにかけての曲線が美しく見えるというのも理由です

ちなみに、我が家にある別の和包丁、水野鍛錬所・源昭忠には、「えぐり」がありません。また、堺刀司の薄刃包丁 には「えぐり」があります

※ 堺刀司の和包丁にも「えぐり」の有るものと無いものがあります。堺に所在のある「特定の刃付け業者さん」が、このシェイプの外観に仕立てていると推測しています

峰も同様に仕上げる

包丁の峰を磨く
郷右馬允義弘
鎌型薄刃
白紙2号
峰の部分も丁寧に磨いて仕上げました

作業的には、アゴの部分とほぼ同様の磨き方をしています

包丁の峰は、上の方を持って握り込むと手に当たる部分ですし、常に目に入るところでもあります
峰の角を丁寧に丸め、磨き上げると、庖丁の高級感がぐっと上がります
(安物の洋包丁は、プレスで抜いた跡が残っていたり、バリ取りがいい加減だったりと、差の出やすい部分です)