インナーシリンダーを叩き出す
この工程(インナーシリンダーの叩き出し)は、ガスシリンダーの分離と、座面ベースの取り外しが終わっていることが前提です
ガスシリンダーの分離については…
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OAチェアガスシリンダーの分解(アウターシリンダーからインナーシリンダーを分離) のページを、
座面ベースの取り外し(インナーシリンダー上端の露出)については…
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イトーキ・スピーナ(OAチェア)の分解 のページをご覧ください
Ko-ken 19mm
ソケット
ガスシリンダー先端のボタンが邪魔で、直接叩き込むことができませんので、当金を使います
当金には、ソケットレンチ用のソケットを流用することが可能です
どのサイズのソケットがぴったりか、いろいろ当てて試したみましたが、
2面幅(対辺寸法)19mmのソケットが最もフィットしました
ここで実際に使用しているのは、差込角9.5mmのモデルですが、12.7mmでもどちらでも構いません。(差込角は、ソケットに嵌める正方形の穴のサイズを指します)
ソケットレンチを使うことで、インナーシリンダー外周部に均等に力が伝わりますので、取り外し方向に真っ直ぐ衝撃を与えることが可能になります
TONE
コンビハンマー
「
ソケットを買わずに、身近な工具でなんとかならないものか?」と思う方もおられると思います
ここは一つ、試しということで、貫通ドライバーでシリンダーの角をピンポイントで叩いてみたりしましたが、全く外れる様子がありません
実際に試してみましたが、全く外れませんでした。
ドライバーの先端は面積が小さいため、強い衝撃を伝えることができません
強い衝撃を与えると、逆に先端が食い込んでしまうため、食い込むことに衝撃パワーが使われてしまい、インパクトの角が丸まってしまうのです
ヘルメットやバンパーは、それ自体が壊れることで衝撃を和らげて吸収していますが、それと似たことが起こっていると思ってください
ある程度の面積が無いと、インパクトが伝わりにくいのです
(上の画像はイメージです。ドライバー先端を当てる位置はここではありません))
KTC
貫通ドライバー
貫通ドライバーとは、(上の画像のように)
グリップ内部をロッドが貫通しており、底部が金属で覆われた頑強なドライバーです
固着したネジを外す際に使用するもので、
叩き込んで衝撃を与えることで、固着を緩めるために使用するものです
このタイプは日本のドライバーに特有のもので、海外のドライバーにはあまり見られません
スイスPBなどの有名メーカーは、わざわざ日本向けに貫通タイプを作っていますが、どちらかというとマイナーな存在です
なぜ海外では貫通ドライバーが普及しないのかと言うと、これは整備文化の違いで、海外では「固着したネジには、専用工具であるショックドライバーを使用するべき」という考え方があるからです
貫通ドライバーは、このような叩き出し作業に使えないこともないですが、先端の面積が極小のため、そのまま叩くと対象パーツに食い込んで傷つけるだけに終わる場合もあります
確かに、貫通ドライバーは叩くための工具ではありますが、ネジを叩くための工具です
使用する場合は、圧入パーツの叩き出しのために設計された工具ではないことを考慮の上で使用する必要があります
ソケット(ソケットレンチ用のソケット)を被せた状態です
TONE 19mm
ソケット
ソケットは、本来このような用途に使用するものではありません
工具マニアのわたしとしても、おすすめしづらいところです
全面的に推奨はできませんが、素材としてはクロムモリブデン鋼が使用されていますので、強度的には全く問題ありません。そしてなにより、サイズがぴったりです
ただ、表面のメッキが痛む可能性が無いとは言えません
Snap-onなどの、高価で立派なメッキのかかったソケットを叩き出しに使うのは、少々ためらわれると思います。その場合は
TONEなどの比較的安価で入手しやすいソケットを使用すると良いと思います
ちなみにわたしは、長年使い込んだ
Ko-kenのソケットで叩き出しました
Ko-ken関係者の皆様、こんな使い方をしてゴメンなさい。Ko-kenはレンチもソケットも信頼性が高く、価格と性能の両面で高く評価しています(個人的に30年ほど愛用しており、大好きなメーカーの一つです。めっきもしっかりしており、この程度の叩き込みではびくともしませんでした)
キタコ
マルチパーパスグリス
5g
インナーシリンダーを、簡単に外すことができました
時間にして1分もかかっていません。叩いた回数も10回以下です
所詮テーパー嵌合でしかありませんので、固着が緩めば自重で落ちます。嵌合幅全体を叩き出す必要がありません(勝手にストンと外れます)
予想の通り、かなり錆が酷い状態でした
錆が酷くなければ、前述の「貫通ドライバー叩き」で外れたかもしれません
叩き出し作業の難易度は、アウターシリンダーよりもインナーシリンダーの方が難しい場合が多いです
アウターシリンダーは、シリンダー側の嵌合面に塗装が施されており、受け側の方は樹脂製(POM樹脂等のエンジニアリングプラスチック)であることが多いです
このため、素材的にお互いが固着しにくく、分離しやすいのです。錆による固着も、ほとんど発生しません
インナーシリンダーは、この真逆です
嵌合面の双方が金属地肌であるため、表面に錆が出ると固着が酷くなり、こうなると難易度がかなり上がります
錆が生じると容積が増してしまうため、楔のような作用をして外れにくくなります
錆が出ていない場合でも、滑らかな金属表面同士に圧をかけて密着させると、それだけでくっついてしまうことがあります(分子レベルでの「接合」です)
このため、インナーシリンダー側は強く固着していることが多く、アウターシリンダーに比べると、難易度が上がる傾向にあります
前述のように、「難易度が上がる」とは書きましたが、真っ直ぐな方向に、充分な衝撃を与えることができれば、比較的容易に叩き出すことが可能です
嵌合形状が、円筒ではなくテーパーであるため、比較的外れやすいのです
わたしが行った実作業では、貫通ドライバーでは外れなかったインナーシリンダーも、ソケットを当てて叩いたところ、10回程度叩いただけで、あっけなく外すことができました
「真っ直ぐ、均等に、硬い素材で、一気に衝撃を与える」という条件さえ揃えば、あっけないほど簡単に外れます
この条件のどれか一つでも欠けていると、1時間叩き続けても外れない場合があります
どうしても外れない場合の対処
座面ベース
交換用パーツ
インナーシリンダーがどうしても外れない場合は、左の画像のような「
汎用品の座面ベース」を使って、インナーシリンダの取り付け部を丸ごと交換するという手法もあります
(左の画像の商品です、実売価格が表示されない場合は広告ブロッカーをOFFにしてみて下さい)
※ この方法は、普及タイプのOAチェアの場合に有効です
高級タイプのOAチェアでこれをやると、椅子のグレード自体が大幅に下がってしまいます。そもそも、取り付けること自体が難しいと思います(おすすめできません)
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