
ガスシリンダーの交換について、これまでのページで一通りの解説は終わりました
作業手順の流れは、あらかた判ったと思います
このページでは、これまでの解説では触れなかった部分や、きちんと説明すると長くなるので、説明せずに端折ったところについて、解説したいと思います
浸透潤滑剤 CRC 5-66を効果的に使う
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事前にスプレーし、放置する
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充分な時間を置き、浸透を待つ
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その後叩き出す
これが上手な使い方
「1~2」を繰り返すと、更に効果的
錆が出ている場合は、浸透潤滑剤をスプレーし、時間を置く
KURE CRC
5-56
(浸透潤滑剤)
事前に浸透潤滑剤をスプレーしておくというのは、一つの有効な手段です
浸透潤滑剤の浸み込む余地が無い「完全密着型プレスフィット」の場合は、あまり効果が出ない場合もありますが、ガスシリンダーの場合は、上端の嵌合面がザラザラに処理されていることが多く、浸透の余地があります
WD-40でも構いません。こだわる方は、WAKOSの「ラスペネ」を使いましょう
AKracing
ガスシリンダー交換用
オプションキット
CRC556などの浸透潤滑剤には、(錆を溶融して除去するまでの力はありませんが)錆を緩めてくれる効果があり、固着を緩めるには有効です
また、浸透力が強いため、嵌合面の奥まで届きやすいというのもあります(こちらの方が重要です)
浸透潤滑剤をスプレーしても、奥まで浸透して効果を発揮するには一定の時間がかかります
特に圧入嵌合面は、ネジ溝のような隙間が少ないため、簡単には浸透しません
そもそもの固着が弱い場合は、スプレーの必要すらない場合もありますが、目に見えて錆が出ている場合は、事前にスプレーを済ませ、半日~1日程度の時間を置いて、充分な効果が出てから叩いた方が、結果的に作業が早く、楽に済む場合があります
スプレーした後、速攻で効果が出るように思っている人もいると思いますが、それは「CRC 5-56」のCMの見すぎです
いくらスプレーしても、必要な部分に届かなければ、効果が出ることはありません
(次の次の画像を見れば、よく判ると思います)
わたしが作業したケースでは、目に見えて錆が出ていたため、スプレー後1日置いてから叩き出しを行いました
スプレーは一度だけではなく、一定時間毎に何度も塗布することで、液剤が奥まで届くよう配慮しています
ガスシリンダーを取り外した後は、樹脂素材に付着した浸透潤滑剤を、きれいに拭き取っておきましょう
椅子の脚に使用されている樹脂素材は、強度の高いエンジニアリングプラスチックであることが多く、耐油性も高いですので、5-56が付着してもひび割れや劣化に繋がる可能性は低いです
とはいえ、やはり、拭き取っておくにこしたことはないのです
(ポリプロピレン系の樹脂の場合は、表面の劣化が早まります)
樹脂・プラスチックは、どれも同じではありません。興味の有る方は、こちらの樹脂ハンドルはどれも同じではない のページをご覧ください
レカロシート
チェアスタンド
上の画像は、今回取り外したインナーシリンダーの嵌合部です
浸透潤滑剤を、たっぷり何度もスプレーし、丸一日以上置いてから外しました
CRCが浸透して錆が緩んでいる部分もあれば、密着が酷くてほとんど浸透していない部分もあることが判ります
言ってみれば「
この程度」です
少しでも隙間があれば、ある程度は浸透しますが、
隙間なくきっちり嵌っている部分までは浸透が届きません
それでも、(浸透が届く部分については)一定の効果はありますので、やらないよりはやった方が良いのです
過剰な期待はいけませんが、何もしないよりは効果はあります
ケミカルも道具も、物は使いようですので、正しく効果的に使ってやってください
この作業については、「浸透潤滑剤かシリコンスプレーを使う」と書いてあるページが複数あります
ですが、シリコンスプレーは推奨できません
正しい知識と充分な経験のない人が「やってみた系のページ」を作り、それを見て作業した人が同様のコピーページを作り、誤った知識がどんどん拡散します(気をつけましょう)
シリコンスプレーは潤滑効果はあるのですが、浸透潤滑剤ほどシャバシャバではありません
わずかながら粘性のある液体ですので、毛細管現象による浸透効果は浸透潤滑剤の方が高いです
また、錆を緩める効果はありませんので、錆による固着が原因の場合は使用しても効果がありません(完全な間違いです)
微細な隙間に浸透させ、固着を緩める用途には、浸透潤滑剤以外の選択肢はありません
シリコンスプレーは、非金属性の樹脂やゴム系の素材の潤滑に適しています
繰り返しになりますが、ケミカル類も説明書をよく読み、正しく使いましょう
WD-40
浸透潤滑剤
座面ベースとインナーシリンダーの結合部です
「CRC 5-56」をスプレーし、浸透を待っているところです
赤く錆が浮いていることが判ります
シリンダの周囲を囲んでいる樹脂製のカバーは、恐らくポリプロピレン製でしょう
それほど耐久性の高い素材ではありませんので、飛び散った5-56は、放置せずに拭き取った方が良いです
(画像撮影後に拭き取っています)
ワコーズ
ラスペネ
上の画像は、
取り外したシリンダーを布で拭い、状態を確認しているところです
浸透潤滑剤を事前に塗布していたおかげで、軽度のサビは緩んでおり、拭うだけで落ちました
ですが一方で、かなり深い腐食の跡も見られます
このような状態にならないよう、
組み付け時にグリースを塗っておくと、未来の交換作業が楽になるというものです
※ 組立時のグリース塗布については、こちらの
OAチェア ガスシリンダー取付時の注意事項 のページで解説しています
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※ こだわる方は「ラスペネ」を選択しましょう。
プロが好んで使う業務用の浸透潤滑剤です。家庭用のマルチパーパス製品とは、わけが違います。
5-56に比べると値段も大幅に違いますが、それだけの価値があるというものです。
なお、ラスペネのラスはRust(錆)、ペネは"Penetration(浸透)からきています。
「パーツトレイ」有ると無いとでは結構違う
KTC
パーツトレイ
上の画像は、今回使用した工具です
マグネット付きパーツトレイは、こういったDIY作業には欠かせません
(中央の銀色のお皿みたいな道具です)
底の部分に磁石が付いているため、
ボルトやナットが転がらず、置いた場所に張り付いてくれます
ボルトやナットの紛失防止、ネジ溝への異物付着防止にも役立ちます
また、
取り外し時に順序よく整理して並べておくと、
外した順番がよく判るため、
組み付け時にまごつかなくて済むというのも良いところです
単にボルトやナットを入れておくだけなら、適当なお皿でも構わないのですが、専用に設計された道具には一日の長があるというものです
こういった補助道具のメリットが実感できる人は、無理に良さを訴えなくても、「これは買いだ!作業効率が上がる!」…となりますが、
良さが判らない人には、いくらおすすめしても決して買うことはありません
ですが、そういう人に限って、「組み立てたら、ネジが一本余った・・」とか言ったりします
そういう方は、他の仕事をやらせても、そのレベルの仕事しかできません
作業に計画性がなく、いきあたりばったりだったりします
パーツトレイは道具としては地味な存在ですが、こういった脇役の道具を大事にする人は、きれいで抜かりのない仕事をするものです
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工具の選択

使用した工具について、簡単に解説しておきましょう
叩き出し時は、
コンビハンマー
の金属側を使用し、ネジ類はSnap-onの
ラチェットドライバー
(旧タイプ)で外しました
ボルト類は、
差込角3/8のko-ken製ラチェットレンチ 3753PB
で脱着しています
30年ほど前に購入したものですが、今でも大事に使っています。今買うなら
Z-EAL 2725Zが良いでしょうね。(非の打ち所がありません)
差込角1/4のFACOM製ラチェットセットも所有していますが、適応トルクを考えると「3/8サイズ」が、丁度よい感じでした(「1/2」を持ち出すほどでもありません)
エクステンションバーや、
スピンナーハンドル
も、適宜併用しています
エクステンションバーは、ハンドルを回す方向に障害物がある場合、ハンドルとの距離を取って効率よく作業するために、スピンナーハンドルは、少し大きめのトルクをかける時や「本締め」の時に使っています
また、ピックアップツールやLEDライトも一部使用しています
イトーキ Spina
スピーナチェア
今回作業対象となったオフィスチェア、イトーキ「Spina」(スピーナ)です
わたしが実際に使っている椅子で、今回の作業対象です
すでに10年ほど使用しており、毎日長時間座っているため、着座時間も相当なものになっています
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