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「いまよう」- 関孫六のおすすめ包丁を選ぶ

最終更新日: 作者:月寅次郎
関孫六 いまよう

関孫六のおすすめ包丁 - 目次

  1. 「わかたけ」「ほのか」- 高炭素ですらない
  2. 「茜」- 口金がイミテーション
  3. 「匠創」- オールステンゆえのデメリット
  4. 1次選考通過分
  5. 「安土」「桃山」- 切れ味は良いが…
  6. 2次選考通過分
  7. 鋼材グレード順に並べてみよう
  8. 「萌黄」- 樹脂ハンドルの功罪
  9. 「くじゃく」「木蓮」- コスパが中途半端
  10. 関孫六のおすすめ(最終選考)
  11. 「いまよう」- 単層ブレードのベストバランス
  12. 「べにふじ」「青藤」- 中堅グレード王道ど真ん中
  13. 評価を終えて - あとがき

当ページ(および当サイト)の内容は、わたしの刃物に関する経験と知識を元に書き記したもので、時間と手間をかけて貝印に確認した情報も含まれています。無断転載やコピーなど、コタツ記事への流用を一切禁止します。換骨奪胎してYouTubeで自説のように語るのもおやめ下さい。某ゲーム系ユーチューバーには警告を行いました

「いまよう」- 単層ブレードとしてはベストバランスに近い

「いまよう」は、関孫六の中の下あたりのグレードに相当します。

『中の下』では、全然ダメではないか?」と思う方もおられるかもしれませんが、それは底の浅い捉え方でしかありません。むしろ実生活では、真に実用的な包丁となり得ます。

まず、(少しだけ)鋼材グレードが下位な分だけ、価格がぐっと抑えられています。
しっかりした合わせ口金付きで、積層強化木のハンドルでありながら、税込公式価格で5,000円を切っています。良コスパでありながら、安っぽさがありません。この点は高く評価すべきです。

また、鋼材含有炭素量が抑え気味になっている分だけ、耐蝕性に優れており、なおかつ靭性も優秀です。
つまり、わざわざコストのかかる3枚合わせ構造にして、高硬度鋼材のデメリットである耐蝕性の悪さや、靭性の低さを克服する必要がないのです。

耐蝕性が充分なため、使用後に濡れたままで放り出していてもなんともありません(酸性の強いもの、塩分が付着した場合を除きます)
また、靭性が高いため刃こぼれもしにくく、冷凍食品を切る際にもあまり神経質になる必要がありません

硬度的にも良い意味で中庸ですので、シャープナーの刃が硬度負けを起こさず、早く確実に刃が付きます(シャープナーは消耗品ではありますが、より長持ちさせることができると言うわけです)

敢えてデメリットを挙げるならば、刃持ちの点で「べにふじ」や「青藤」に一歩劣る程度です。

そういった視点から改めて「いまよう」を見てみると、(関孫六の中では)単層ブレードのベストバランスに近い存在です。
そう、単層ブレードの包丁は、上手に作ると、低価格で実用的な刃物に仕上がるのです。
ただ、どのメーカーも高い包丁を買って欲しいと思っていますので、この単層ブレードのメリットについてはあまり啓蒙されていません(3枚合わせのメリットについては、しきりに訴えるのですがね)

単層ブレードの包丁は、ヘンケルスやビクトリノックスなど、西洋メーカーの得意分野です。

日本の刃物文化は世界的に見てもかなり特殊な方で、国内メーカーが優れた刃物を造ってきたこともあり、日本の消費者は「刃物は硬いほど良い」という幻想からなかなか抜けせなくなっています。

薄手でしなるフィレナイフで魚を捌いてきた西洋人とは、刃物文化が異なるため、「硬度は甘いが、良い刃物」という視点で刃物を捉えることが、実に下手なのです。

逆に西洋の刃物メーカーは、単層ブレードで刃が付きやすい硬度の包丁ばかりを造ってきました。
これは、日本のように高品質の天然砥石が産出しなかったためでもありますが、チョッピングと言って叩き切るような包丁使いの習慣があるため、硬度を上げると刃こぼれしがちで、硬度が上げられないという背景があったからでもあります(その分、中庸な硬度の包丁を作るのが、実に上手です)

高価格帯の包丁は、それはそれで素晴らしいものですが、高硬度の鋼材を使用しているため、硬い・研ぎにくい、靭性が低い、芯材の耐蝕性が悪いといったデメリットも内包しています(メーカーや販売業者は決して口にしませんが…)
● 関連ページ: 高硬度の包丁は、家庭では扱いにくい

もちろんそれらのデメリットは、砥石の性能や研ぎの技量、包丁の扱い方で何とでもなるのですが、「子育てで忙しくて、いちいち包丁なんか拭いていられない」という方も、世の中にはたくさんおられるのです。
こちらのページでも同様に、実生活での包丁について触れています

子育てだけではなく、さまざまな理由で人生にそういう時期はあったりするものです。

包丁をあまりケアせずに、道具として使い倒す場合には、「いまよう」は一番のおすすめです(細かいことを気にせずに、タフに使える良い包丁です)
(あまりおすすめはしませんが、包丁を食洗機で洗えばさらに手間が省けます。その場合は、一次選考で除外した「茜」を推したいと思います)

関孫六 いまよう を見てみよう

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【 評価・いまよう 】
コスパが良く、それでいて外観もしっかり。単層ブレードのベストバランスに近い。
包丁をシャープナーで研ぐ場合は、特に「いまよう」がおすすめ。

(刃が付きやすく、シャープナー側も長持ちする)

追記:槌目入りの新モデル『いまよう』

「いまよう」にモデルチェンジが施され、側面に槌目の付いた外観となりました(2021年春頃より)

槌目を入れると見た目が派手になりますが、ただそれだけであり、機能的なメリットは皆無です。
むしろ、洗う時と洗浄後の水分の拭き取りに手間がかかり、ネガティブにしか働きません。
窪んでいる部分には汚れが溜まりやすく、一拭きで水分を拭えないのです。

衛生面においても好ましくありませんので、包丁の本質を外していると言っても過言ではないでしょう。

当ページでの「いまよう」の評価は、このページを作成した時点のものであり、モデルチェンジ前の「いまよう」を評価したものです。

現行モデルの「いまよう」の評価については、書籍版のおすすめ包丁ランキング(関孫六スタンダード編)をご覧ください。
(評価を大きく変更いたしました)


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