コンパウンドで包丁を鏡面に仕上げる


コンパウンドによる手磨きで、包丁に鏡面の輝きを!

包丁をコンパウンドで鏡面に仕上げる
ホルツのラビングコンパウンドを使い、手磨きで鏡面の一歩手前まで持っていきます
柔らかいタッチで手磨きすることで、かなり鏡面に近い状態まで仕上げることができました

包丁のアゴ付近の刃面を見ると、まだ微細な傷が残っていることも判ります
これは5ミクロンのコンパウンドで手磨きすれば、容易に除去できる程度の、微細な磨き傷です

「青棒の5ミクロン → 50ミクロン」なぜ、番手を下げたのか?

ホルツのラビングコンパウンドは、平均粒子サイズが50ミクロンとかなり大きめです
前の工程が青棒でのバフがけでしたので、番手を下げていることになります

一般的な青棒の平均粒子サイズは5ミクロン程度であり、おおよそ#3000番の番手に相当します
ラビングコンパウンドの50ミクロンというのは、メッシュ番手では#320番程度に相当します
3000番の後に320番を使うというのは、番手だけを見るならば、鏡面の手前から下地出しに戻ってやり直すような行為になってしまいます

実際には、このラビングコンパウンドの50ミクロンという粒度は、10~15ミクロン程度の粒子を複数結着させて、見かけ上の粒子サイズを大きくしているだけのようです
磨いていると、ジャリジャリと粒子が潰れていく感覚が指先に伝わってきますし、実際に仕上がる肌の状態も、10~15ミクロン相当です(推測ではありますが、これまでの経験上、あながち間違いではないと思います)

とはいえそれでも、5ミクロンから10~15ミクロンに番手を下げているわけで、そういう意味では研磨のセオリーに反する行為です
にもかかわらず、青棒の時よりも明らかに肌の状態が良くなっており、包丁が実際に鏡面に近づいています(前ページの青棒バフがけ画像と比較してご覧ください)

繰り返しになりますが、磨いた結果がどれだけ細かい目に仕上がるかというのは、番手の数字(粒子サイズ)だけに左右されません
研磨粒子の硬度、角が立った粒子か、それとも角が落ちているのか、さらにはベース素材の硬軟、加える力の強弱、接触面積の違いによる圧力の大小 ・・・などに、総合的に左右されます

そのため今回のように、15ミクロンの粒子を使って優しく手磨きするのと、5ミクロンの粒子を深めに食い込ませて研磨するのとでは、前者の方が微細な目に仕上がる場合があります

「わたしのバフがけの技量が未熟すぎる」と言ってしまえばそれまでなのですが、番手の数字だけで考えてはいけないという良い見本かもしれません
耐水ペーパー一本で、下地出しから鏡面近くまで持っていく場合には、このようなことを考慮する必要はありませんが、今回のように複数の研磨素材を使い分けて使用する場合は、よくよく考えて作業しないと、思わぬ「後戻り」となってしまう場合があります。このあたりは、経験がモノを言う部分です

ラビングコンパウンド → ブルーマジック → ウィルソン超微粒子

この後は一気に仕上げたため、作業画像が無いのですが、いつものように、ブルーマジック(5ミクロン)とウィルソンの超微粒子(1ミクロン相当)で仕上げています

実際のところは、ブルーマジックの段階で、包丁は充分鏡面に仕上がります
ブルーマジックの代わりにピカールを使用しても、問題なく仕上がると思います

ウィルソンの超微粒子を使っているのは、ただの「ダメ押し」でしかありません
見た目では、光の反射の仕方が、ほんの少し白っぽくなる程度です(はっきり言うと、それほど大きな変化はありません)

わざわざ1ミクロンのコンパウンドを用意しなくても、充分鏡面といえる程度に仕上がります
なのに、どうして使用しているかというと、「昔購入したものが、未だに手元に残っているので使っている」というだけです(若干、写真映りを良くしたいというのもありますが…)
もしも新規に購入する場合は、「5ミクロンではどうしても満足できない」ということを確認してからでも遅くはないでしょう

ちなみに、1ミクロンのコンパウンドは、粒子サイズが小さいために、本当にわずかしか削れません
すでに鏡面となっている状態から、よりキレのある輝きを出す程度のものですので、鏡面が出ていない状態で使用しても、何の役にも立ちません

そういう意味では、1ミクロンサイズのコンパウンドは、鏡面にするための研磨剤ではなく、すでに鏡面になっている肌を、よりシャイニーにするための、輝きを引き立たせるもの、…と考えて使用すると良いと思います

鏡面に仕上がった包丁

鏡面仕上げにした包丁(個人DIY)
紆余曲折や途中での方針変更(刃の厚みを抜く)などありましたが、最終的には無事に鏡面に仕上げることができました

 なんということでしょう!
 あの傷だらけだった包丁が、嘘のように鏡面に光り輝いています

 「劇的ビフォーアフター」風のナレーションで、脳内再生してお楽しみください

作業前の「ビフォー」の画像はこちらです

鏡面仕上げにかかった作業時間

カチカチに硬く、腐食も酷かった炭素鋼のオピネルの時と比べると、今回の藤次郎のペティナイフは、三枚合わせのステンレス材だったこともあり、側面鋼材が柔らかめで、格段に作業時間が短く済みました

正確に計測したわけではなく、おおよその目安ですが、荒砥で包丁の厚みを抜くのに半日以上、中砥で荒砥の目を消して下地を出す作業に1~2時間、下地の確認作業(耐水ペーパー2000番での研磨を含む)に1時間、赤・白・青棒でのバフがけに1~2時間、コンパウンドでの手磨きに1~2時間程度かかっていると思います

熟練した方なら、短時間でさっさとやり遂げてしまうと思いますが、下手くそな素人作業ですので、このように長時間かかっています
仕事ではなく趣味ですので、時間をかけて丁寧に、疲れたらすぐ休憩したり、作業を止めて別の日に回したりしています

実はこの、複数日に分けて作業するというのが、包丁を極上の鏡面に仕上げる重要なポイントです

前日には、「この辺でもうええわ、疲れたし。傷残ってるけど、あんまり目立たんからええやろ‥」 …と、「投げやりモード」になっていたのが、翌日のフレッシュな状態で再びブレードを手に取ると
「やっぱりもう一度、傷取りからやり直そう。このままの状態で番手上げたら、絶対後悔する~」 …と「妥協を許さない状態」に戻ります

どれだけ丁寧に作業できるかは、自分のメンタル的なコンディション次第ですので、自分自身を上手に休憩させてあげるのが、極上の鏡面に仕上げるコツだったりします
少なくとも、短気でせっかちな状態で、すぐに鏡面に仕上げようとすると、ろくな結果になりません
いささか残念な鏡面に仕上がるか、下地出しに戻って一からやり直しになったりします

ネット上には、「グラインダー跡が残っている状態から、いきなりピカールでガシガシ磨きました!」みたいな、「残念な鏡面」が散見されますが、惚れ惚れするような鏡面に仕上げたい場合は、是非とも、それぞれの日ごとに作業を分け、しっかりした下地を出してみてください

一度ではなかなか思ったような下地にならず、最初はやり直しを繰り返すかもしれませんが、きっちりとした下地さえ出すことができれば、極上の鏡面は、ほぼ約束されたようなものです

ブルーマジックか、ピカールか?

わたしはブルーマジックを使っていますが、これでなければダメだというわけではありません
ピカールとブルーマジックは、粒子サイスもさほど変わらず、研磨材も同じアルミナですので、「実使用での差異は、あまり感じられない」と言って差し支えないと思います

ピカールは3ミクロンですので、5ミクロンのブルーマジックの方が(敢えて言うなら)切削力が高く、傷取り力、傷消し力に優れています。 一方のピカールは、粒子サイズが小さいですので、仕上げた時の鏡面度はこちらの方が上になりますが、今回のように、さらに細かい極細目のコンパウンドを使用して、最終仕上げを行う場合は、あまり意味がありません(それよりも速やかに磨き傷が取れてくれた方が助かります)

とはいえ、これらはあくまでも、厳密に比較すればという話であり、数字で比較すれば、そうなってしまうというだけの話です
3ミクロンだ、5ミクロンだといっても、それはあくまでも「平均粒子サイズ」ですので、少々のサイズブレもあるでしょうから、それほど気にすることはありません

ピカールもブルーマジックも、(下地さえきちんと出ていれば)どちらも鏡面に仕上がりますし、その差は目視判別できないレベルだと思います。
もちろん、下地が出ていなければ、どちらを使用しても、鏡面には仕上がりません

「ピカールとブルーマジックはどちらが優れているか?」ではなく、それぞれのシチュエーションにおいて、「この場合、最も研磨に適した粒子サイズと研磨素材はなにか?」という観点で考えるべきだと思います

 ▲ 前ページ:バフがけ(青棒、白棒、赤棒)で 包丁を鏡面に近づける

 ▼ 次ページ:鏡面に仕上がった包丁



 ● 関連ページ1:ペティナイフの鏡面仕上げ(方法・手順)

 ● 関連ページ2:オピネルナイフの鏡面仕上げ

 ● 関連ページ3:藤次郎 DPコバルト合金鋼割込 ペティナイフを使ってみた

 ● 関連ページ4:藤次郎のDPコバルト合金鋼は、本当にV金10号なのか?

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