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包丁のカスタム6 - 隙間の充填(防水処理)

最終更新日: 作者:月寅次郎

柄の隙間を埋め、水分の侵入を防ぎ、耐久性を向上させる

包丁 カスタム
この包丁は「未使用」で入手しましたが、年代物の古い包丁だけあって、あちこちに微細な隙間が生じていました

隙間から奥に浸透した水分は抜けにくく、ハガネの包丁の場合は中子の腐食に繋がります

しっかり修理(対策)して、長期の使用に耐えられるようにしたいと思います

まずは、この包丁を入手した時の、現状の確認から始めましょう

作業前の状態

包丁のカスタム(作業前)
峰側の状態です

中子と板材の間に、わずかながら隙間が生じています

中子の角に、グラインダーが噛み込んだ跡が残っていますが、これはハンドル全体を整形・研磨する際に削り取りました)

実際の作業の様子は、こちらの…
中子の傷とバリの除去 のページで紹介しています

包丁のカスタム(作業前)
こちらは腹側の様子です

背側も腹側も、右側面の口金付近にわずかな「浮き」が見られます

錆で押し上げられたのか、乾燥によって木が反ったか、元々の合わせ方が甘いのか、未分解のため原因は特定できませんが、「内部腐食(錆)による内側からの押し上げ」の可能性が、最も高いと見ています

包丁のカスタム(作業前)
右側面には、ピンの後方に隙間が生じています
この部分も、丁寧に塞いでおきたいところです

この角度から見ると、縞黒檀の木理がよく判ります。黒と茶のコントラストの美しい、実にいい塩梅の木目となっています

隙間を埋める

木粉
隙間の充填には、漆と木粉を使います

まずは、木を削って「木粉」を作ります

包丁 カスタム
木粉を隙間に押し込み、奥深くまでしっかり充填します

木粉充填の前工程として、薄く溶いた漆を浸透塗装させています(数回実施)
そのため、木肌が光沢を帯びた状態になっています

隙間が生じている部分は、なるだけ奥まで漆を浸透させようという算段です

包丁 カスタム
峰側も同様に木粉を充填します
こうすると、どこに隙間が生じているか、色の違いでよく判りますね

包丁 カスタム
腹側も同じく充填です

包丁 カスタム
ティッシュで筆代わりの「こより」を作ります
この後、薄めた漆を充填箇所に浸透・硬化させます

充填部に漆を浸透・硬化

包丁 カスタム
漆を浸透させているところです

包丁 カスタム
峰側も浸透が終わりました

包丁 カスタム
漆をさらに数回塗り重ね、軽く研磨をかけた状態です

隙間を埋める際は、目立たないよう「黒色」の漆を使用しましたが、
ハンドル全体に塗る際は、縞黒檀の木目が引き立つよう、「透明色」を使用しています)

東邦産業
漆・黒色
東邦産業
漆・透明
漆らしい飴のような色味を出したい場合は、「透(すき)」がおすすめです

包丁 カスタム
峰側です
おおよそきれいに充填できたようです

包丁 カスタム
こちらは腹側です

導管もいくぶん埋まってきたため、木肌に滑らかさが出てきて、風合いも良くなってきました

包丁 カスタム
充填・浸透後のピン周辺です

導管はかなり埋まりかけていますが、隙間を埋めた部分は、まだ段差が残っています
段差自体は大したことはないですし、実用上は何の問題もありませんが、きれいに「面一」に仕上げたいですので、エポキシ樹脂で埋めることにしました
段差の高さはごく僅かなのですが、これを塗装で埋めるのは、結構大変です

後から考えれば「刻印埋め」の要領で、希釈しない漆をそのまま塗り、研磨を施して仕上げても良かったかなと思います

エポキシで、埋めきれなかった段差を修整

包丁 カスタム
マスキングして、エポキシを塗り込めているところです

包丁 カスタム

コニシボンド
クイック30


セメダイン
ハイスーパー30

塗ったエポキシ樹脂を研磨して「面一」に仕上げました

画像は研磨途中の状態ですので、エポキシの被膜がまだ厚めに残っています

この間何度か漆を塗り重ねていますので、導管の方もかなり埋まってきました

導管が完全に埋まると、「凹凸皆無のツルテカ面」が出来上がり、美しい光沢が生まれます
ウレタンクリア塗装とは一味違う、艷やかで深みのある塗膜です

この後きれいに平滑に仕上げ、仕上げ塗りを施して完成させました
最終的には、下の画像のようになりました

※ エポキシ樹脂の使用(接着・充填)については…
包丁の柄の自作 のページや

和包丁の防水処理(エポキシ充填) のページを併読すると、参考になると思います

塗装を施し、完成

包丁 カスタム

試行錯誤とやり直しの連続ではありましたが、おおよそ満足の行く仕上がりとなりました
漆の塗り重ね回数は、合計で14回に至っています

14回も塗り重ねたのは、塗り方が下手でムラが出たり、乾燥中に床に落としたりして、何度もやり直したからです
スムーズに進めば、より少ない回数で仕上がったとは思います。「まだまだ下手くそ」だなと反省しています
言い方を変えると、なかなか一発で仕上げることができず、「首尾よく仕上がるまで何度も繰り返し、たまたまきれいに塗れた時に止めた」という感じです

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