月寅次郎のサイト

包丁のカスタム2 - 口金の鏡面仕上げ

最終更新日: 作者:月寅次郎

口金の形を整え、鏡面に仕上げる

包丁 カスタム(口金 鏡面)
口金のカスタムポイントは…
  • 製造時に付いた細かな傷を削り落とす
  • 角を落として指当たりを良くし、凹面をフラット化
  • 丁寧に研磨して鏡面仕上げに
 …の3点です

今回は、サンドペーパーの番手を上げる工程の、詳細画像を撮影しました
耐水ペーパーの番手を徐々に上げることにより、金属表面の平滑度が上がり、鏡面となる様子がよく分かる思います
鏡面仕上げに興味のある方は、ぜひご覧ください

● 参考ページ:関孫六 10000CLのカスタム
(この包丁は口金の形状は変更せずに、鏡面に近い状態に仕上げました)

作業前の状態

包丁 カスタム(作業前)
作業前の状態です(右面)

角の部分にグラインダーが当たった傷が見て取れます
口金表面にも筋状の傷が目立ちます

包丁 カスタム(作業前)
作業前の状態(左面)

こちら側は大きなキズはありませんが、「22 1」という刻印が入っています
一体型口金のため、一般的な「逆アール付きの凹面」になっています

この部分は、滑らかにアールを付け直し、指あたりを良くしたいところです

ミニルーターで大まかに切削、整形

包丁 カスタム(口金 鏡面)
プロクソンのミニルーターに軸付き回転砥石を装着し、大まかに形状を整えます

数字の刻印も、削り取りました
ゴリゴリと削ったおかげで、当たり傷も盛大に付きました

包丁 カスタム(口金 鏡面)
アタッチメントを当たりの柔らかい「ゴム砥石」に変更し、傷目を細かくしていきます

プロクソン
ミニルーター
軸付回転砥石 回転ゴム砥石

棒ヤスリで細かな形を整える

包丁 カスタム(口金 鏡面)
棒ヤスリに持ち替えて、さらに細かく整形します

電動工具は、とにかく早く削りたい場合には良いですが、自分の思い描いた形に通りに削るのは、慣れと技術が必要です

棒ヤスリを使うことで、効率は落ちますが、左右均等でより整った形に揃えることができました

目標とする形状は、「凹面をフラットに整え、角を落として丸みを帯びた形状に」というものですが、おおよそそこまで持っていけたと思います

この後は、サンドペーパーを使って傷目を細かくし、鏡面まで持っていきます

サンドペーパーで段階的に研ぎ目を細かく、最期は鏡面へ

包丁 カスタム(口金 鏡面)
#240番耐水ペーパーで、研磨をかけます

今回は、棒ヤスリの研ぎ傷の深さを考慮し、240番からスタートすることにしました
どの番手からスタートするかは、磨く対象の状態次第です

研ぎ傷の目が、いくらか細かくなりました

この段階で深い傷を見逃すと、後でやり直しになってしまいます
研ぐ角度を変更して研ぎ直し、前段階の研ぎ傷が取れているのをよく確認し、次の番手に進みます

包丁 カスタム(口金 鏡面)
#400番の耐水ペーパーに番手を上げて、研磨をかけます

ギラギラしていた研ぎ目が薄くなり、かなり傷が薄くなってきました

包丁 カスタム(口金 鏡面)
さらに、#800耐水ペーパーで仕上げた状態です

磨く面積が比較的小さめのため、比較的短い時間で次の番手に進むことができています

繰り返しになりますが…
1.研ぐ方向を変えて繰り返し研ぐことと、
2.ライティングを工夫して光に反射させ、研ぎ目の状態を確認しながら作業をすすめる事
・・・は、とても重要です

包丁 カスタム(口金 鏡面)
#1500番耐水ペーパーで仕上げた状態です

金属の光沢感が、徐々に出てきました
なかなかいい感じです

この調子で行けば、かなりきれいに仕上がりそうです

包丁 カスタム(口金 鏡面)
#2000番耐水ペーパーで仕上げた状態です

ペーパーと金属硬度の相性が良かったのでしょう
2000番まで上げたところで、かなり鏡面に近い状態まで持っていくことができました

包丁 カスタム(口金 鏡面)
#3000番サンドペーパーで仕上げた状態です

ここまで行くと、「ほぼ鏡面」と言って良いでしょう
すでに充分きれいな状態ですが、この後ブルーマジックで細かな磨きキズを取って、鏡面仕上げの完成となりました

普段は、3000番のサンドペーパーはあまり使っていません
3000番になると、乾式のサンドペーパーになるため、水研ぎができず、目が詰まりやすいからです

そのため、2000番まで耐水ペーパーを使い、その後はホルツのラビングコンパウンドで磨き、さらにブルーマジックで鏡面に仕上げることが多いです

漆の塗装面など、研磨対象が柔らかい場合は、さらにウィルソンの超微粒子を使って、ダメ押しをすることも多いです

完成時の状態

包丁 カスタム(口金 鏡面)

ブルーマジック
口金を鏡面に仕上げた後、漆を塗布して仕上げました
(上の画像の金色に光っている部分が、漆のかかっている部分です)

ハンドルの板材と口金をまとめて塗装することで、板材と口金の隙間が完全に埋まり、水分の侵入を完全に遮断することができました

指あたりも滑らかになり、流麗な美しい仕上げとなっています

業者が「売り物」としてこのようなカスタムを施すと、価格が跳ね上がって採算が取れなくなります。個人のDIYカスタムでなければできない、贅沢なカスタムです

鏡面仕上げのポイント

磨く方向を変える、光に反射させて研ぎ傷の状態を確認する

三共理化学
超精密研磨フィルム

#8000
まず、サンドペーパーで縦方向に研磨し、縦に研ぎ目を付けます

次に、同じ番手で横研ぎに変更し、縦の傷が取れ、横向きの研ぎ傷が揃うまで研磨します

この工程を何度か繰り返し、要所要所で光にかざしながら確認すると、この番手の粗さより深い傷が残っているかどうかが判ります

深い傷をすべて磨き落とし、「使っている番手の研ぎ目」しか付かなくなったら、次の番手に上げることができます

次の番手に上げる前は、研磨粒子の角が丸まってヘロヘロになったペーパーを使い、優しく優しく研ぎ上げます
同じ番手のペーパーでも、切れの良い新品の状態と、使い込んでヘロヘロになったペーパーとでは、食い込みの鋭さが全く違います

番手を上げる直前は、角の丸まった「へたったペーパー」を使うと、上の番手が繋がりやすくなります

同じ番手でも、三段階に分けて研磨する

SK11
液体研磨材

#3000~#5000

ダイヤモンド
ペースト
#60000
何も考えずに力を込め、ザクザク・ゴリゴリと磨くだけでは、きれいな鏡面に仕上がりにくく、どこかの段階で深い研ぎ傷が残りやすいものです

同じ1500番手のペーパーであったとしても
1.前の番手(ここでは800番)の傷を消す段階
2.1500番の研ぎ目を均一に付け、確実な「1500番の研ぎ目」に仕上げる
3.次の番手(ここでは2000番)に繋げるため、1500番で引き出せる最も細かい目に仕上げてフィニッシュする
・・・の3段階に分けて考えるのは必須です(ただ漫然と磨けば良いというものではないのです)

今の「磨き」は、1~3のどの段階の処理に相当するのかを、意識しながら作業に当たることが重要です

簡単に言うと、「前段階の砥ぎ目を確実に取り去り、次の番手に進む」というだけなのですが、曇りのない美しい鏡面に仕上げられるかどうかは、結局のところ、どこまで細かく繊細に作業できるかにかかっています
(経験が少なくて自信のない場合は、番手を上げる際に大きく飛ばさずに、番手を細かく上げていけば、比較的失敗しにくくなります)

サンドペーパーの番手(品質)を、完全には信用しない

三共理化学
サンドペーパー


コバックス
サンドペーパー

サンドペーパーの番手は、あくまでも「おおよその平均値」でしかありません

ミクロン単位で完全に同じ粒径で揃っていることはまずありません
ある程度のばらつきはあるものです。「一定の範囲内に収まるように揃えている」というだけにすぎません

三共理化学、コバックス、NCA(ノリタケアブレーシブ)等の定評のあるメーカーは、このあたりの信頼性が高く、安心して使用できますが、100均で販売されている、安物の低品質サンドペーパーは注意が必要です

ちなみに、このページに登場している耐水ペーパーは、「モノタロウ」のプライベートブランドのものです。
以前まとめ買いしたため、仕方なく使っています(少し後悔しています)

モノタロウの耐水ペーパーは、キレが今一つで、研磨粒子の密着度や紙の柔軟性も今ひとつです
(はっきり言って、品質レベルはあまり高くはありません)

たまに「なんでこんな大きい傷が入る?」といったようなこともあります
そのため、ペーパーを最初に使う際は、ゴリゴリ当てずに圧を柔らかくかけ、ある程度ペーパーがこなれるのを確認してから面圧をかけるようにしています

低品質のサンドーペーパーは、その分価格が安いですので、「ケレン」などの清掃目的で使うは良いですが、鏡面研磨に使用する場合には、より品質の確かなものを使用することをおすすめします


サンドペーパーの選び方 については、左記のリンク先ページをご覧ください
有名どころのNCA(ノリタケ)、三共理化学、コバックス等について解説しています

次の番手に移る目安

新潟精機
ポリッシング
パウダー
#20000
次の番手に移って良いか否かは、見極めが重要です
ここは「何分磨いたら次のステップへ進む」というようなものではありません

次の番手に上げて良いか否かは、「磨いた時間」ではなく、自分の目で研ぎ目を確認して判断する必要があります

作業対象の硬度と、初期状態の傷の深さ如何で、作業時間は大幅に変わるものです
1時間で終わるものもあれば、20時間磨いても終わらない場合もあるのです

【 ご注意ください 】
ネット上には「2時間磨いたら鏡面にできる!」といった安易な記事が溢れていますが、あのたぐいの「短時間・簡単系」の記事は、耳目を集めるために誇張して書かれている場合が多いです
(逆に「48時間磨いてみた!」とか、長時間を売りにして耳目を集めようとするコンテンツもあります)

どちらにしても、そういうサイトに限って、鏡面化の事例が「たったの一つ」しかなかったりします
要は、本人が本当に興味を持ち、やりたくてやっているのではなく、アクセスを集めるために、ページや動画を作る「作業」をやっているだけなのです

そういうところに限って、底が見えそうな浅い経験とネットで拾った情報しか書かれていなかったりします。言ってみれば『釣り記事』でしかありません

鏡面仕上げについて
当サイトで紹介している「鏡面仕上げ」の関連ページ、及び、具体的な施工例

ブルーマジックのウソ・ホント - 粒度、研磨剤、成分
ピカールの粒度と研磨素材
「ピカールとブルーマジックを磨き比べた~!」は愚の骨頂
オピネルの鏡面仕上げ
和包丁のカスタム - 鏡面加工と漆塗り

 ・・・興味のある方はご覧ください(参考になるかと思います)

カスタム作業、工程毎の解説ページ一覧


日本橋木屋の牛刀 DIYカスタム

日本橋木屋の牛刀 包丁の解説


おすすめの包丁(外観より切れ味重視でランキング)

家庭用のおすすめ包丁(安い価格で、最良の切れ味を)

ダマスカス包丁について(本当におすすめ?)

包丁のトップページ に戻る