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包丁のカスタム3 - ハンドル整形・磨き・塗装

最終更新日: 作者:月寅次郎

ハンドルの形状を整え、より握りやすい形状に

包丁 カスタム(ハンドル)
ハンドルの形状を整え、より美しく、握りやすい形状にします

基本的にはアールを大きめにとってフィット感を良くする方向性ですが、小指と薬指の関節の当たるところ(腹側)は、大きめにえぐって、指あたりを柔らかくしたいところです

作業前の状態

包丁 カスタム(作業前)
上の画像は、作業開始前の初期状態です

現代で多用されている積層強化木とは異なり、良質の無垢材(縞黒檀)が採用されています
穿った見方をすると、昭和っぽさを感じさせる一時代前のハンドルと言うこともできます

杢がいい塩梅に出ており、風合いは言うことありませんが、形状的にはいささか「四角四面」の感じもするところです

丁寧に形を整えることで、この昔ながらのハンドルを、美しく現代的に仕上げてみたいと思います

大まかに整形する

包丁 カスタム(ハンドル)
研磨・整形を始めます

400番の耐水ペーパーで、大まかに削り込みます

包丁 カスタム(ハンドル)
どんどん削り込みます

包丁 カスタム(ハンドル)
必要に応じ、水研ぎも併用します

木材としては密度の高い縞黒檀とはいえ、中子やピンなどの金属と比べると硬度が大きく異なります
硬度差による段付きが出ないよう、当てゴムを活用しながら研磨をすすめます

包丁 カスタム(ハンドル)
柄尻の部分と、小指・薬指が当たる部分は、大胆に削り込みました

画像は、ラフに削りを入れている状態です

番手を上げ、表面を磨き込む

包丁 カスタム(ハンドル)

コバックス
サンドペーパー

サンドペーパーの番手を上げ、2000番で丁寧に磨き込みます

漆による下処理(導管埋め)が上手くいったおかげで、表面に浮き出ていた導管の穴ぼこが消え、流麗で平滑な面が出ています

この状態から乾磨きを進めるのも一つの手法です(艶が出て美しい表面に仕上がります)

ハンドル研磨の前工程として、中子の傷やバリを除去し、微細な隙間をすべて埋め込む処理を施しています
この埋め込み処理で漆を塗ったおかげで、導管の穴があらかた埋まりました
導管の穴をきれいに埋めて目立たなくするのは手のかかる作業ですが、きれいな平滑面と穴ぼこだらけの面では大違いですので、入念に埋め込むようにしています

中子の傷やバリを除去 については、こちらのページで…

隙間の埋め込み作業 は、こちらで別途解説しています
両方とも地味な作業ですので、あまり面白くないかもしれませんが、美しい仕上がりを実現するにはこのような作業が不可欠です

包丁 カスタム(ハンドル)
反対面の状態です

ここまで丁寧にアールを付けると、市販品では出せない「特別なカスタム感」が醸し出せます

包丁 ハンドル 比較

三共理化学
サンドペーパー

関孫六 4000CLのハンドルを並べて比較してみました

角の立ち方や面のつながり具合に、大きな違いがあることが判ります
角を滑らかにしたおかげで指当たりが良くなり、フィット感も向上しました

導管もきれいに埋まっており、もう少し磨き込めば、次の工程(トップコートの表面塗装)に進めそうです

塗装直前、研磨完了の状態

包丁 カスタム(ハンドル)

三共理化学
超精密研磨フィルム

#8000
さらに、磨き込みを進めました(塗装する直前の状態です)
「ここから乾磨きを進めるのも一つの手法」と書きましたが、乾磨きでどこまで輝くのか、ちょっと試してみました

※ 白い背景で撮影したため、露出の関係から木の色が黒っぽく写っています
黒く艶のある質感になっていますが、これで塗装前の状態です(まだ何も塗っていません)
木の質が良いため、乾磨きを施すだけで、ここまでツヤピカになります
(布や紙を使って、丁寧に磨いただけです)

漆浸透による「導管埋め」と「磨き込み」も終わっているため、後はトップコートを乗せるだけです

包丁 カスタム(ハンドル)
傷痕の酷かった中子もこの通り、ピッカピカに仕上がりました

ここだけ見れば、あれほど傷が入っていたとは誰も思わないでしょう
「高級な包丁のハンドル」といった雰囲気を醸し出しています

● 傷を取る前の状態は、中子の傷やバリを除去 のページでご覧になれます

包丁 カスタム(ハンドル)
金属部分は、漆をかけない方が硬質な光沢が出て好みです

本音を言うと「この状態のままで使いたい」とも思うのですが、この刃体はハガネ製です
中子が腐食するのはできるだけ避けたいですので、耐蝕性を向上させる目的でハンドル全体に漆を塗布することにしました

包丁 カスタム(ハンドル)

SK11
液体研磨材

#3000~#5000

ダイヤモンド
ペースト
#60000
この角度からみると、中子のテーパーの付き方が良く判ります
ナイフで言うところの「フルテーパードタング」になっています

口金はきっちり鏡面に仕上がりました
口金の鏡面仕上げについてはこちらのページ をご覧ください

真鍮ピンは材質的に柔らかいため、研磨する際、磨き傷が深めに入りやすく、苦心したところです
単一材質であればそれほど難しくはありませんが、複合素材が合わさったものを均一に磨くのは、なかなか難しいです

導管の穴が判別できなくなるまで、きれいに埋め込むのは、個人的に重要なポイントです
穴の露出が残っていると、「安物感」や「やっつけ仕事」の感じが漂ってきます

無垢の木材表面を、ここまで平滑に仕上げるのは作業的にも大変ですが、やるとやらないとでは、仕上がりに大きな差が生じます

まだ完成ではありませんが、この状態でも充分美しいですね

この後の工程で漆のトップコートをかけるのですが、この状態でも隙間は完全に埋まっていますし、木材の表面の漆浸透も終わっています
いわば「拭き漆」といえる状態ですので、このままでも充分使用に耐える状態にはなっています

完成後の状態

包丁 カスタム(ハンドル)
表面に漆を塗って完成です

包丁 カスタム(ハンドル)
東邦産業
うるし(透明)

このハンドル整形と研磨の工程は、隙間埋めや口金磨き、中子のバリ取り、導管の埋め込み等の工程と並行しながらの作業となりました

各作業の詳細については、ページ末尾の「カスタム作業、工程毎の解説ページ一覧」をご参照ください

失敗も数多くあり、その都度修整に追われましたが、なんとか美しいハンドルに仕上げることができました

漆の選択についてですが、東邦産業のうるし(透明)を使用しています(左の画像の商品)
「透(すき)」の方が、漆らしい飴色の色調に仕上がりますが、「透明」は、それよりも明るめの色調に仕上がります
「本透明」は、さらに薄い色調です

黒檀のような黒褐色の木材に、「透(すき)」を合わせると、色が濃くなって木目がわかりにくくなる傾向があり、それを避けるためにワンランク明るい「透明」を使用してみました
結果的にはちょうど良い色調が得られ、縞黒檀の黒い部分と赤みがかった部分のコントラストが、良好に表現できたと思います

※ 注意
濃い色の漆を使用しても、塗膜が薄ければその分色味も薄くなります
反対に、薄い色を使用しても、べっとり厚めに塗料を盛ると、濃厚な色調に仕上がります
このあたりは、塗る人のさじ加減次第です

包丁 カスタム(ハンドル)

漆の塗り方について

このページでは漆塗りについて詳しく解説していませんが、興味のある方は・・・、
包丁の柄を修理(自作木製ハンドル)
和包丁の柄を漆で塗る
関孫六 10000CLのカスタム
オピネルフィレナイフのカスタム
オピネルのカスタム
 ・・・のページをご覧ください

カスタム作業、工程毎の解説ページ一覧


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