関孫六10000CL(三徳包丁)のカスタム
関孫六10000CL(貝印の三徳包丁)を
カスタムして、外観をより美しく仕上げました
カスタムポイントは…
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柄を漆で塗る
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口金を鏡面仕上げにする
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アゴの内側を磨く
…の3点です
サンドペーパーで一度しっかり研磨します
メーカー出荷状態の表面は、それなりにきれいに仕上げられていますが、大量生産品であるがゆえに、完全な平滑面が出ているわけではありません
一度磨いて仕上げたつもりでも、よくよく見ると、磨き残しが残っていて目が荒くなっている部分が、後から後から見つかります
塗装における
「下地出し」は、仕上がりを決定づける重要なポイントなので、万全を期して何度かやりなおしました
今回は口金も鏡面にする予定ですので、一度しっかりと
ペーパーがけを行い、メーカー出荷時の研磨痕を除去しました
サンドペーパーは、信頼できる国産メーカーの製品を使用して下さい
「ノーブランドの安物と、どこが違うのか?」については、
● サンドペーパーはどれも同じではありません のページで、「粗悪ブランドの実例」を揚げて解説しています
下地だしが終わり、塗装直前の状態です
最終的に、サンドペーパーの番手は2000番まで上げています
番手を上げたおかげで、口金の平滑度も上がり、きれいな下地を出すことができました
この「下地出し作業」は、最も重要です。きっちり入念に行う価値があります
漆塗り1回目の状態
塗りムラもやや見られますが、この程度であれば、塗り重ねて研磨をかけることで修正可能です
最終的に、漆を5回塗り重ねました
無垢材の天然木であれば、10回以上塗ることもありますが、これは樹脂を浸透させた「強化木」ですので、漆の吸い込みが少なく、少ない塗装回数で、充分な光沢が乗りました
『漆』を使う場合は?
筆者が使っているのは、東邦産業の『特製うるし』です。
本漆ではなく代用品のカシュー漆ですが、乾燥時の特殊設備も不要で、紫外線にも強く、なおかつ低価格です。
乾燥後に本漆と見分けるのはほぼ不可能です。わざわざ高額な本漆を使う必要はありません。
また、東邦産業のうるしは、本来釣具用塗料ですので、防水性や耐久性も充分な担保が取れています。
色のチョイスは、漆らしい濃い目の色に仕上げる場合は『透(スキ)』を、
色合いを薄くして木目を際立たせたい場合は、『透明』がおすすめです。
(この10000CLでは、透明を使っています)
● 漆 東邦産業 (amazonで検索)
● 漆 東邦産業 (楽天で検索)
東邦産業のうるしを探す場合は、上のリンクをタップすれば表示されます。
(検索文字を入力する必要はありません)
漆だけでなく、専用薄め液や刷毛も見つかります。
口金のマスキングテープを剥がします
わたしが愛用しているのは、「
3Mのマスキングテープ」(18mm幅)です。
一般的なマスキングテープよりもしなやかで、接着剤の質も良く、安定して使いやすいです
たまに、ベース紙として使われている和紙の繊維が、目視で見えるようなテープもありますが、ああいうのは、(強度は高いのかもしれませんが)ゴワゴワして使いにくいと感じます
マスキングを剥がしたところです
なかなかいい感じに仕上がっているようです
この
10000CLは、アゴの内側も比較的丁寧に処理されているのですが、
「丁寧に」というのは、あくまでも市販品の平均レベルにおいて…ということです
手作業で磨きをかければ、さらに平滑な表面に仕上げることも可能です
手磨きを施す前に、作業時間を短縮して楽をするため、ミニルーターに回転ゴム砥石を装着して磨きをかけました
上の画像の
ミニルータは、わたしが長年使っている
PROXXONの「NO.28400」というモデルで、550gとやや重めですが
50Wの強力タイプでトルクも充分です
使用した感想や、ミニルーターの選び方のポイントについては、こちらの
ミニルーター - PROXXON(プロクソン) のページをご覧ください
口金周辺も、同様に磨きをかけます
さらにブルーマジック(研磨用コンパウンド)を使って手磨きを施しました
てらてらとした光沢が乗り、メーカー生産品では出せない「カスタムグレード」の風格が出てきました
● ブルーマジックの基本的な使い方については、左記リンク先ページをご覧ください
手前味噌ではありますが、「日本語で書かれた中では最も詳しい解説ページ」です
アゴの内側も丁寧に磨きました。美しい光沢が乗り、市販品とは一味違った趣を見せています
包丁のグレード感が一段とアップした感じです
このページでは、「アゴ内側の磨き込み」について、掘り下げて解説はしていませんが、興味のある方は下記リンクを参考にして下さい
● 和包丁のアゴの磨き込み(薄刃包丁)
● 包丁のアゴの磨き込み(ミソノのスウェーデン鋼牛刀)
「和包丁のアゴ磨き」のページの方が、より詳しい作業解説になっていますが、実際にやる場合は、両方とも目を通しておいたほうが良いと思います
柾目が出ている柄の背側です
漆の塗膜を通して、木目の輝きが美しく覗いています
色味も鮮やかになり、とても美しいハンドルに仕上がりました
比較のために、
カスタム前の状態も掲載しておきましょう
これはこれで美しい仕上げの包丁だと思いますが、
カスタム後の状態と比較するのは、少々分が悪いですね。
(それでも大量生産品の包丁としては、とても高いクオリティに整えられていると思います)
塗膜の厚さと木肌の状態が合うと、構造色のようなキラキラした反射が出ます
10000CLのハンドルが、白木のような色調であることも幸いしました
黒っぽい積層強化木に漆塗りを施しても、(ある程度はきれいになりますが)ただの黒いツヤツヤなハンドルになるだけで、塗膜の奥から戻ってくるキラキラ反射は期待できません
カスタム前のハンドルの状態です
大量生産の包丁としては各部の仕上がりも良く、品質的に非常に優れています
ハンドメイドを売りにしている小規模メーカーでも、結構仕上がりの荒いものがあったりするものです
参考ページ:
実際にあった刃付が酷すぎる例
柄尻の部分は、元々の樹脂浸透の具合が今一つで、なかなか平滑な塗膜に仕上がりませんでしたが、何度も塗装を繰り返したおかげで、きれいに仕上がることができました
※ 柄尻の部分を見ると、この包丁の柄が「くり抜き構造」になっていることが判ります
これは、他の包丁メーカーでは容易に真似のできない技術でもあります(それなりの設備が必要です)
「関孫六 10000CL」が、先進的で現代的な包丁と言える部分の一つです
実際に使ってみた様子です
まだ、仕上がりに若干甘い部分も残ってはいますが、
全体的にいい感じに整ったと思います
世界に1本だけの、美しい10000CLに仕上がりました
● 関連ページ:
月寅次郎の包丁カスタム一覧
動画で見る
完成後の状態は、YouTubeでも見ることができます
よかったら見てやってください。
(他の包丁や研ぎ方もアップしています)
月寅次郎チャンネル (YouTube 動画一覧)は、こちらです
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