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100均の包丁(ダイソー) - 包丁ブランドの解説(8)

最終更新日: 作者:月寅次郎

100均 包丁

Galaxy.(ギャラクシー/ダイソー)

包丁を低コストで製造するということに関しては、他の追従を許さない(ほど雑な造りです)

口金を付けず、射出成形の樹脂ハンドルで形状加工を省略し、刃体の「スキ加工」に手を抜きまくれば、包丁はここまで安くできるという見本かもしれません。

包丁としてのクオリティは「下の下」ではあるものの、決して「道具」として使い物にならないわけではありません。
もちろん刃持ちは悪いですし、刃抜けの良さは期待するべくもありません。また、後述のように10年持たずに柄が折れたとしても、驚くには至りません。

ですが、「価格が安い」というのは、それはそれで一つの価値となり得ます。

100均の包丁を、「典型的な安物包丁」と見ることもできますが、「よくぞ、ここまで安くした!」という見方をすることも可能です。
そういう意味では、どの視点で見るかで、評価の分かれる包丁です。

100均包丁のブレード形状

ダイソー 包丁
上の画像を見ると判りますが、

銀色の部分は平面のままで「無加工」になっています。(鋼材の板厚がそのままになっている)
濃いねずみ色の部分は、「スキ(削り)」が入っている部分で、この部分のみが切削加工されています。

つまり、エッジ側4分の1程度を削っているだけで、峰側のほとんどの部分はノータッチになっています。

包丁としては、「何コレ?」と言いたくなるほど、雑な形状加工ですが、見方を変えると、低価格で販売するために、ギリギリまで製造コストを抑えた結果と言えなくもありません。
ちなみに、まっとうな刃物メーカーの包丁は、かなり峰に近い部分まで削りを入れてテーパーを付け、刃の抜け具合が最適になるよう切削加工してあります。

このように、100均の包丁はブレードのスキ具合が劣悪ですが、逆にこの部分を丁寧かつ精密に仕上げるメーカーとしては、MISONOがよく挙げられます。

個人的には、MISONOが製造し、日本橋木屋が販売した牛刀を持っていますが、「よくここまで薄く仕上げたな」と、言いたくなるくらい、刃を薄く研ぎ抜いています。(その分価格も高いです)

刃体のスキ加工(テーパーの付け方)に関心を持つのは、包丁に造詣の深いマニアか、刃の抜け具合にこだわる本職の料理人くらいで、一般の方が興味を持つことはほとんどありませんが、この部分はある意味包丁の肝であり核心でもあります。

本当に「良い包丁」を求めるのであれば、「ブレードのスキ具合に、どれだけ手をかけているか?」を重視すべきだと思います。手をかけてブレードを薄く鋤いた刃体は、刃の抜け具合が良いので切れ味も良好です。

刃先にいくら鋭い刃を付けても、刃体の抜け具合が悪ければ抵抗が大きくなってしまい、体感的な切れ味は大きく落ちてしまいます。

100均 包丁
ちなみにこの包丁ですが、一度先端から落とした事があるようで、先端が曲がっています(画像右端の先端部分が、反対側に曲がっています)
切っ先が折れずに、めくれるように曲がっているところを見ると、(靭性は高いが)その程度の硬度しか出ていないということが判ります

旧型の「Galaxy777」と、現行型の「Galaxy.」 違いは?

このページに掲載している画像の包丁には、刃体に「Galaxy777」と印字されていますが、現行製品からは「777」が消え、「Galaxy.」となっています。

また、現行品の包丁は、「包丁の厚みが若干薄くなったようだ」との情報もあったため、販売元に確認を取ってみました。

ダイソーに問い合わせたところ…
旧型の万能包丁(三徳包丁)が、刃厚:1.5mmであったのに対し
現行品の包丁は、刃厚:1.2mmと、より薄くなっているとのことでした。
(厚み以外に変更点はなく、素材(鋼材)等の変更は無し)

一般的な三徳包丁の厚みは、おおよそ2.0mm前後であることが多く、1.2mmというのは、フィレナイフ並の厚みになります
薄く圧延した鋼材を使用することで材料費を抑え、低価格に寄与しているものと思われますが、それにしてもやや薄すぎる感じがしないでもありません。
ここまで薄いと、少々頼りない使用感になると思います。

なお、この包丁の仕様変更は、「ダイソー」の「ギャラクシー万能包丁」の話であって、出刃包丁など、他の形状の包丁については、調査していません。

ちなみに、現行製品の商品名は、「ニューギャラクシー万能包丁」であり、
(JANコード:4994163294818)
販売を終了した旧型品の商品名は、「ギャラクシー穴無万能包丁」となっています。
(JANコード:4994163282211、もしくは、4994163180739)

100均の包丁は、本当に切れるのか?

清水製作所
スーパートゲール

100均の包丁でもきちんと研げば、ビックリするほど良く切れる!」というのは、YouTubeでよく見かけるコンテンツです。

技術の確かな人が時間をかけて丁寧に研いでいたり、経験の少なそうな人がスーパートゲールを併用して研いでいたりと、さまざまです。

たいていの動画では、研いだ直後の状態でさまざまな試し切りを行い、切れ味を確かめています。

ここで重要なのは、「その後の経過を検証する動画」がほとんど見当たらないことです。

100均の包丁を研いでから、1ヶ月間使い続けました。さて、切れ味はどこまで落ちたでしょう?」…といった動画は、全く見当たりません。

それもそのはず、切れ味が顕著に落ちているのが当たり前で、そんな意外性の無い動画など見向きもされません(ですので作る方も、そのような動画は撮影することがないのです)

なにしろ炭素量0.4%以下のSUS420J2鋼材でも、きちんと研げばそれなりに刃は付きます。
安物とはいえ包丁であれば、炭素量0.5~0.6%くらいの刃物鋼は使用していると推測されます。それで切れる刃が付かなければ、それは何らかの「製造に起因する不良」でしかありません。(焼入れの不良など)

ですがこのような、刃物としては硬度が低めの包丁は、研ぎたてはそれなりに切れたとしても、刃持ちがよろしくないのが普通です。

100均の包丁が「きちんと切れる」ことについては、さほど驚くべきことではありません。
驚嘆すべきことがあるとすれば、これを100円の価格で製品化しようとした「経営判断」の方だと思います。

低価格の包丁の切れ味については、こちらのページで検証しています
100均包丁ではありませんが、大手メーカーのローエンドクラスで検証しています

100均包丁の評価すべき点

ダイソー 包丁
100均包丁の評価すべき点は、なにより価格が安いということです。

低コストで製造しているため、造りに安っぽい点は多々見られるものの、包丁として使えないわけではありません。(色んな意味で、長持ちはしませんが)

間違っても高品質とは言い難いですが、購入直後であれば切れないというわけではありません

100均包丁のダメな点

長切れ(刃持ちの良さ)については、期待できません。
刃の抜け具合についても、前述のように良くはありません。(刃厚が薄手な点は、幾分寄与していると思います)
刃がかりの良さについても、基本的に期待できません。
仕上げも雑で、刃はペラッペラです。

世の中には包丁を全く研がずに使い続ける方々も、一定の割合で存在します。

そのような方々が日々使っている包丁は、刃筋が著しく摩滅しているため、新品の100均包丁と比べてしまうと、「100均包丁の方がよく切れる」ように感じらることもあるでしょう。

このように、比較対象を何に求めるかで、100均包丁も良い包丁になったり、ダメダメな包丁になったりします。

ただ、「100均の包丁でも、きちんと研げば驚くほど切れる!」という場合は、「よく切れる」という評価基準が低すぎるように思います。 (普通に切れるというのであれば、まだ理解できます)

きちんと研げば刃物としてそれなりに使えるけれども、その状態が長く保てるわけではないので、決して「良い道具」とはなりえません。

中子が短すぎて構造的に脆弱

上の包丁は8年で柄が折れたそうですが、ちょうど中子の末端部分のところで、柄がポッキリ折れています。

以下に、わたしがリツイートした内容を引用してみましょう。(折れた原因についての解説です)

この包丁は、100均ダイソーのギャラクシー万能包丁(外観から推定)
中子がポッキリ折れたわけではなく、刃体は損傷してなくて、柄が破損したわけですね。

構造的には樹脂ハンドルの「差し込み中子+半中子」だけど、中子の長さがあまりにも短すぎる。
包丁としては、構造的に脆弱すぎます。設計そのものが悪いというか、コストダウンのやりすぎです。

もっと中子が長くなければ、使っているうちにこうなるのは、構造的に自明です。
驚くようなことではありません。

ハンドル材質も安物のPP樹脂(ポリプロピレン)で、強度も耐久性も充分ではありません。
樹脂ハンドルの差込中子であれば、POM樹脂製の包丁を選びましょう。
でなければ本通しか、背通しの包丁です。(これらの包丁は、まず折れません)
包丁の樹脂ハンドルはどれも同じではない

包丁の折損事例を調査したページはこちらです。
オールステンレス包丁の折損問題

折れているのは、意外にもオールステンレス包丁が多いですが、それ以外はセラミック包丁と、今回のような安物の半中子で、構造自体が脆弱な製品です。

あぁいかん、つい包丁マニア目線でマジレスしてしまった。(ごめんなさい)

比較対象の包丁次第では、100均包丁も良心的?(追記)

当初、この「100均包丁」をクソミソにこき下ろした評価をしていましたが、とある包丁を調査しているうちに考えが変わりました。
そのため、当ページの内容も大幅に加筆修整しています

包丁としての品質は低くとも、それに合った適正な価格で販売されていれば、それはそれで一つのバリュー(価値)なのだと、考えを改めたのです。

利益を低く、価格も安く設定し、その分を消費者に還元するというのは、消費者側にとってはありがたいものです 競合他社にすれば、「お願いだからヤメて!」となるでしょうが。

世の中にはさまざまな包丁があるもので、色々と仔細に見ていると「何なのだこれは?」と声が漏れてしまうような包丁もあったりします。

使用材料と製造コストは安物包丁クラスなのに、価格だけ高級な包丁があったりするのです。これホント!
そのような、消費者を舐めているような包丁に比べると、100均の包丁の方がよほど良心的かもしれません。

前述の「中身は安物で、価格だけ高級包丁」が何を指すかについては、申し訳ないですが「大人の事情」で詳細を語ることができません。

おっとこんなところに、全く無関係のリンクが張ってあるぞ、これはきっと何かの間違いだな。
スーパーストーンバリア包丁
うん、そうに違いない。きっとそうだ。

その他の包丁ブランド - 目次

  1. 包丁のブランド(メーカー)について
  2. 関孫六・旬(貝印)
  3. ヘンケルス Henckels
  4. ツヴィリング Zwilling
  5. グローバル(吉田金属)
  6. 藤次郎
  7. ヴェルダン(下村工業)
  8. ビクトリノックス Victorinox
  9. Misono
  10. ギャラクシー(ダイソー・100均)
  11. Gサカイ
  12. グレステン(ホンマ科学)
  13. MAC(マック)
  14. 関虎徹(安田刃物)
  15. 京セラ
  16. KASUMI(スミカマ)
  17. ヤクセル
  18. パール金属
  19. ヴォストフ Wusthof
  20. オピネル Opinel
  21. ティファール T-fal
  22. マイヤー Meyer
  23. アムウェイ Amway
  24. スーパーストーンバリア包丁

※ 当ページに書かれているのは、あくまで刃物好きの包丁マニアとしての、個人的な印象です(絶対的なものではありません)

人の価値観はそれそれです。
自動車の世界でも、エアロパーツをゴテゴテ装着して車高を極端に落とした車を、「かっこいい」と思って乗っている人がいる一方で、「恥ずかしい・みっともない」と思う人も存在します。
それと同様に、価値には多様性が存在します。

このページに書かれていることは、単に一方向から見た個人的な意見です。(多人数の意見をまとめて集約したものではありません。あくまでも一つの参考として捉えて下さい)


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