Galaxy.(ギャラクシー/ダイソー)
包丁を低コストで製造するということに関しては、他の追従を許さない(ほど雑な造りです)
口金を付けず、射出成形の樹脂ハンドルで形状加工を省略し、刃体の「スキ加工」に手を抜きまくれば、包丁はここまで安くできるという見本かもしれません。
包丁としてのクオリティは「下の下」ではあるものの、決して「道具」として使い物にならないわけではありません。
もちろん刃持ちは悪いですし、刃抜けの良さは期待するべくもありません。また、後述のように10年持たずに柄が折れたとしても、驚くには至りません。
ですが、「価格が安い」というのは、それはそれで一つの価値となり得ます。
100均の包丁を、「
典型的な安物包丁」と見ることもできますが、「
よくぞ、ここまで安くした!」という見方をすることも可能です。
そういう意味では、どの視点で見るかで、評価の分かれる包丁です。
100均包丁のブレード形状

上の画像を見ると判りますが、
銀色の部分は平面のままで「無加工」になっています。(鋼材の板厚がそのままになっている)
濃いねずみ色の部分は、「スキ(削り)」が入っている部分で、この部分のみが切削加工されています。
つまり、
エッジ側4分の1程度を削っているだけで、峰側のほとんどの部分はノータッチになっています。
包丁としては、
「何コレ?」と言いたくなるほど、雑な形状加工ですが、見方を変えると、
低価格で販売するために、ギリギリまで製造コストを抑えた結果と言えなくもありません。
ちなみに、まっとうな刃物メーカーの包丁は、かなり峰に近い部分まで削りを入れてテーパーを付け、刃の抜け具合が最適になるよう切削加工してあります。
このように、100均の包丁はブレードのスキ具合が劣悪ですが、逆にこの部分を丁寧かつ精密に仕上げるメーカーとしては、MISONOがよく挙げられます。
個人的には、MISONOが製造し、日本橋木屋が販売した牛刀を持っていますが、「よくここまで薄く仕上げたな」と、言いたくなるくらい、刃を薄く研ぎ抜いています。(その分価格も高いです)
刃体のスキ加工(テーパーの付け方)に関心を持つのは、包丁に造詣の深いマニアか、刃の抜け具合にこだわる本職の料理人くらいで、一般の方が興味を持つことはほとんどありませんが、この部分はある意味包丁の肝であり核心でもあります。
本当に「良い包丁」を求めるのであれば、「ブレードのスキ具合に、どれだけ手をかけているか?」を重視すべきだと思います。手をかけてブレードを薄く鋤いた刃体は、刃の抜け具合が良いので切れ味も良好です。
刃先にいくら鋭い刃を付けても、刃体の抜け具合が悪ければ抵抗が大きくなってしまい、体感的な切れ味は大きく落ちてしまいます。

ちなみにこの包丁ですが、一度先端から落とした事があるようで、先端が曲がっています(画像右端の先端部分が、反対側に曲がっています)
切っ先が折れずに、めくれるように曲がっているところを見ると、(靭性は高いが)その程度の硬度しか出ていないということが判ります
旧型の「Galaxy777」と、現行型の「Galaxy.」 違いは?
このページに掲載している画像の包丁には、刃体に「
Galaxy777」と印字されていますが、現行製品からは「777」が消え、「
Galaxy.」となっています。
また、現行品の包丁は、「包丁の厚みが若干薄くなったようだ」との情報もあったため、販売元に確認を取ってみました。
ダイソーに問い合わせたところ…
旧型の万能包丁(三徳包丁)が、
刃厚:1.5mmであったのに対し
現行品の包丁は、刃厚:1.2mmと、より薄くなっているとのことでした。
(厚み以外に変更点はなく、素材(鋼材)等の変更は無し)
一般的な三徳包丁の厚みは、おおよそ2.0mm前後であることが多く、1.2mmというのは、フィレナイフ並の厚みになります
薄く圧延した鋼材を使用することで材料費を抑え、低価格に寄与しているものと思われますが、それにしてもやや薄すぎる感じがしないでもありません。
ここまで薄いと、少々頼りない使用感になると思います。
なお、この包丁の仕様変更は、「ダイソー」の「ギャラクシー万能包丁」の話であって、出刃包丁など、他の形状の包丁については、調査していません。
ちなみに、現行製品の商品名は、「ニューギャラクシー万能包丁」であり、
(JANコード:4994163294818)
販売を終了した旧型品の商品名は、「ギャラクシー穴無万能包丁」となっています。
(JANコード:4994163282211、もしくは、4994163180739)
100均の包丁は、本当に切れるのか?
清水製作所
スーパートゲール
「
100均の包丁でもきちんと研げば、ビックリするほど良く切れる!」というのは、YouTubeでよく見かけるコンテンツです。
技術の確かな人が時間をかけて丁寧に研いでいたり、経験の少なそうな人が
スーパートゲールを併用して研いでいたりと、さまざまです。
たいていの動画では、研いだ直後の状態でさまざまな試し切りを行い、切れ味を確かめています。
ここで重要なのは、「その後の経過を検証する動画」がほとんど見当たらないことです。
「
100均の包丁を研いでから、1ヶ月間使い続けました。さて、切れ味はどこまで落ちたでしょう?」…といった動画は、全く見当たりません。
それもそのはず、切れ味が顕著に落ちているのが当たり前で、そんな意外性の無い動画など見向きもされません(ですので作る方も、そのような動画は撮影することがないのです)
なにしろ
炭素量0.4%以下のSUS420J2鋼材でも、きちんと研げばそれなりに刃は付きます。
安物とはいえ包丁であれば、炭素量0.5~0.6%くらいの刃物鋼は使用していると推測されます。それで切れる刃が付かなければ、それは何らかの「製造に起因する不良」でしかありません。
(焼入れの不良など)
ですがこのような、刃物としては硬度が低めの包丁は、研ぎたてはそれなりに切れたとしても、刃持ちがよろしくないのが普通です。
100均の包丁が「きちんと切れる」ことについては、さほど驚くべきことではありません。
驚嘆すべきことがあるとすれば、これを100円の価格で製品化しようとした「経営判断」の方だと思います。
100均包丁の評価すべき点

100均包丁の評価すべき点は、
なにより価格が安いということです。
低コストで製造しているため、造りに安っぽい点は多々見られるものの、包丁として使えないわけではありません。(色んな意味で、長持ちはしませんが)
間違っても高品質とは言い難いですが、購入直後であれば切れないというわけではありません
100均包丁のダメな点
長切れ(刃持ちの良さ)については、期待できません。
刃の抜け具合についても、前述のように良くはありません。(刃厚が薄手な点は、幾分寄与していると思います)
刃がかりの良さについても、基本的に期待できません。
仕上げも雑で、刃はペラッペラです。
世の中には包丁を全く研がずに使い続ける方々も、一定の割合で存在します。
そのような方々が日々使っている包丁は、刃筋が著しく摩滅しているため、新品の100均包丁と比べてしまうと、「100均包丁の方がよく切れる」ように感じらることもあるでしょう。
このように、比較対象を何に求めるかで、100均包丁も良い包丁になったり、ダメダメな包丁になったりします。
ただ、「100均の包丁でも、きちんと研げば驚くほど切れる!」という場合は、「よく切れる」という評価基準が低すぎるように思います。
(普通に切れるというのであれば、まだ理解できます)
きちんと研げば刃物としてそれなりに使えるけれども、その状態が長く保てるわけではないので、決して「良い道具」とはなりえません。
中子が短すぎて構造的に脆弱
上の包丁は8年で柄が折れたそうですが、ちょうど中子の末端部分のところで、柄がポッキリ折れています。
以下に、わたしがリツイートした内容を引用してみましょう。(折れた原因についての解説です)
この包丁は、100均ダイソーのギャラクシー万能包丁(外観から推定)
中子がポッキリ折れたわけではなく、刃体は損傷してなくて、柄が破損したわけですね。
構造的には樹脂ハンドルの「差し込み中子+半中子」だけど、中子の長さがあまりにも短すぎる。
包丁としては、構造的に脆弱すぎます。設計そのものが悪いというか、コストダウンのやりすぎです。
もっと中子が長くなければ、使っているうちにこうなるのは、構造的に自明です。
驚くようなことではありません。
ハンドル材質も安物のPP樹脂(ポリプロピレン)で、強度も耐久性も充分ではありません。
樹脂ハンドルの差込中子であれば、POM樹脂製の包丁を選びましょう。
でなければ本通しか、背通しの包丁です。(これらの包丁は、まず折れません)
● 包丁の樹脂ハンドルはどれも同じではない
包丁の折損事例を調査したページはこちらです。
● オールステンレス包丁の折損問題
折れているのは、意外にもオールステンレス包丁が多いですが、それ以外はセラミック包丁と、今回のような安物の半中子で、構造自体が脆弱な製品です。
あぁいかん、つい包丁マニア目線でマジレスしてしまった。(ごめんなさい)
比較対象の包丁次第では、100均包丁も良心的?(追記)
当初、この「100均包丁」をクソミソにこき下ろした評価をしていましたが、とある包丁を調査しているうちに考えが変わりました。
そのため、当ページの内容も大幅に加筆修整しています
包丁としての品質は低くとも、それに合った適正な価格で販売されていれば、それはそれで一つのバリュー(価値)なのだと、考えを改めたのです。
利益を低く、価格も安く設定し、その分を消費者に還元するというのは、消費者側にとってはありがたいものです
競合他社にすれば、「お願いだからヤメて!」となるでしょうが。
世の中にはさまざまな包丁があるもので、色々と仔細に見ていると「何なのだこれは?」と声が漏れてしまうような包丁もあったりします。
使用材料と製造コストは安物包丁クラスなのに、価格だけ高級な包丁があったりするのです。
これホント!
そのような、
消費者を舐めているような包丁に比べると、100均の包丁の方がよほど良心的かもしれません。
前述の「中身は安物で、価格だけ高級包丁」が何を指すかについては、申し訳ないですが「大人の事情」で詳細を語ることができません。
おっとこんなところに、全く無関係のリンクが張ってあるぞ、これはきっと何かの間違いだな。
●
スーパーストーンバリア包丁
うん、そうに違いない。きっとそうだ。
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スーパーストーンバリア包丁
※ 当ページに書かれているのは、あくまで刃物好きの包丁マニアとしての、個人的な印象です(絶対的なものではありません)
人の価値観はそれそれです。
自動車の世界でも、エアロパーツをゴテゴテ装着して車高を極端に落とした車を、「かっこいい」と思って乗っている人がいる一方で、「恥ずかしい・みっともない」と思う人も存在します。
それと同様に、価値には多様性が存在します。
このページに書かれていることは、単に一方向から見た個人的な意見です。(多人数の意見をまとめて集約したものではありません。あくまでも一つの参考として捉えて下さい)
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