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関孫六・旬(貝印)- 包丁ブランドの解説(1)

最終更新日: 作者:月寅次郎

包丁・関孫六

関孫六(貝印) - 刃物界の巨人・世界の貝印


国内最大手の刃物会社、自動車で言うとトヨタのような存在

包丁以外にもカミソリからキッチン用品まで多種多様の製品を製造・販売
包丁専業ではなく多角化された大企業なので、「何が何でも、売れる包丁を作らんと生き残れん!」という強迫観念が少ない感じ

良く言えば、「まっとうな製品を作っていれば、消費者はきちんと評価してくれる」という性善説にのっとっている感すらある。結果として、中身は良くても外観訴求力の乏しい包丁が少なくない
悪く言えば、ブランドとしての認知度や量販店での棚占有率の圧倒的な高さに安心しきっており、「他社に負けるかもしれない」という危機感に乏しい

低廉な製品から高級包丁まで、ラインナップが多すぎるくらい存在する
包丁の商品数が多すぎて、どれを選んだらよいのか実にわかりにくい …本当にそう感じたので、解説ページを作りました(下記リンク参照)

関孫六の包丁の選び方については…
高級包丁であるプレミアシリーズの関孫六と、

それ以外の(ノーマルの)関孫六の包丁
 …の2つに分け、和包丁を除く全商品を解説しています

ブランドとしての知名度、消費者からの信頼など、揺るがない評価が確立されているため、奇をてらった商品企画で勝負をかける必要もなく、基本的に「ど真ん中ストレート」の包丁が多い

ステンレス包丁全盛の時代に、あまり陽の当たらない炭素鋼複合材の包丁を、ラインナップから落とさずに販売を続けているというだけでも、個人的に評価したい

また、自社製造比率の高さと、焼入れ等に使うトンネル炉の規模も特筆すべきである

技術的なものに視点を移すと、MIM(金属粉末射出成形)技術、特殊接合技術、カシメピンに頼らない新世代型の中通し構造、…など、高級モデルには先端技術が惜しげもなく投入されている
このあたりは、「伝統を重んじる」と言いながらも、実は伝統的なことしかできない中小メーカーにはひっくり返っても真似ができない (外注委託するしかない)

関孫六

「旬」- 貝印の海外向けブランド

海外販売についても抜け目なく、「旬」ブランドで攻勢をかけており、ド派手なツヴィリングの「MIYABI」ブランドと、丁々発止とやりあっている(このあたりは、お互いがライバル関係)

「旬」の主力商品に使用されている鋼材は、主にVG10とVG-MAX(※1)の2つ。このあたりは関孫六プレミアムシリーズと同じ。
※ 例外もあり、デュアルコアにはVG10とVG2の積層材、KajiとFujiにはSG2、KansoにはAUS-10A、フレキシブルナイフにはAUS-8A、…が使用されているが、これらは国内販売されていないので割愛します

● 根拠となるページ:旬に使用されている鋼材(貝印USA・英語)

「旬」は海外向け商品として作られた経緯があるため、関孫六に比べると外観が派手なしつらえになっている。はっきり言うと、ロゴもダサい(※2 個人の意見です。ロゴがダサいのは意図的なもので、これには経営戦略上の理由があります)

コスパで考えると、関孫六プレミアシリーズの方が優秀 いや、旬のコスパが悪いと言うべきか?

※1 VG-MAXと表記されている鋼材は、実はコバルトスペシャル
● 根拠となるページ:関孫六10000シリーズ(貝印USA・英語)
確認したい場合は、上記リンク先の画像を拡大表示すると判る。
使用鋼材はVG-MAXとなっているが、刃体には「COBALT SP」とプリントがあり、武生特殊鋼材のコバルトスペシャルであることが判る。

漢字1文字のダサいロゴを採用している理由

MIYABI 包丁 旬のロゴのダサさ加減は、ツヴィリングのMIYABIと双璧をなしている。

なぜダサいのかというと外国人から見た場合に、格好良く見えるようにデザインしているからであり、元々海外販売向けに開発された商品だからだ。
(国内で販売されている旬は、いわば逆輸入車のような存在)

この点MIYABIの方はより露骨であり、日の丸をイメージさせる赤丸まであしらわれている。
外国人が日本語のデザインをクールだと捉え、漢字の意味もわからずにタトゥーを入れる場合があるが、あれと同じようなイメージで、漢字一文字を一つのデザインとして使用している。

外国人からすると格好良く見えるのだろうが、日本人目線からすると、「どこか外している」感が否めず、ダサいとしか言いようがない(個人の意見です)
とはいえ、海外向け製品は海外で売れれば良いのですよ。頑張って海外でバンバン販売して、外貨を稼いで欲しい。がんばれ日本企業!


ちなみに、関孫六の包丁で個人的に所有しているのは、関孫六10000CL(現行)、関孫六4000CL(廃番)、関孫六 鋼牛(廃番)の3本です

関孫六については、こちらのページでも触れています

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関孫六 要 - 和包丁デザインを取り入れた洋包丁



「要(かなめ)」は、2022年11月に発売された貝印「関孫六」の最高峰包丁です。

八角柄や切付形状など、和包丁を意識させるデザインで、実によくできており、言うことがありません。

ラインナップは、三徳、ペティナイフ、牛刀などのお決まりパターンではなく、切付型の一種類のみ。
サイズ別では、6寸半(195mm)、5寸(150mm)、4寸(120mm)の3種のみと、思い切ったバリエーション展開です。
(個人的には5寸(150mm)が欲しいところ。刃渡り150mmは「小包丁」もしくは「小三徳」と言われるサイズですが、少人数の食事を作るのに重宝します)

機能的に見ると、口金の下側をえぐった形状が素晴らしいですね。「前持ち」で握った時の指当たりが良いということは、見ただけでも判ります。

柄は鋲止めではなく、関孫六10000CLと構造的に同じ造りと思われます。
(柄の中に芯棒が入っており、柄尻側からネジ止めで固定し、外から判りにくいように、柄と同素材で蓋をしてある)

安易に尻金を付けるなどしてゴージャス感を演出しないところも、潔くて素晴らしいです。
(尻金を付けると、せっかくの和風デザインが台無しになってしまうところです)

ロゴデザインは、控えめに「関孫六」の黒一色の文字、これもまたいいですね。
派手派手な包丁が世の中に溢れているからこそ、こういった「いぶし銀」的な、渋さを感じさせるデザインが引き立ちます。

鋼材については「高硬度の特殊ステンレス刃物鋼」としかありませんが、メーカー自ら「関孫六の最高峰」と謳っているわけですから、悪かろうはずはありません。

どこぞのメーカーのように、研ぐのに辟易するほどの、極端に高硬度の鋼材を使う、…なんてことは無いはずです。
(そういう点で信頼を置けるのが、貝印であり関孫六です)

各部の精度、仕上げの丁寧さについても、抜けがありません。
このあたりは、「関孫六プレミア」で培ってきたものがありますので、貝印の得意とするところです。

敢えて言うなら、価格が高いことが難点ですが、関孫六のフラッグシップなのですから、包丁としてのステイタスという観点からも、ある程度の高価格は許容されるべきでしょう。
「これと同じ仕様の柄と口金を作れ」と言われても、真似できる包丁メーカーはほとんどありませんので、そういう意味でも、高くて良いのです。

このような外観デザインの包丁は、日本のメーカーにしか作れないでしょう。

派手好きな外国人にはデザイン的な受けが悪いかもしれませんが、「侘び寂び」の心を知る日本人には、支持されるデザインだと思います。

● 発売時のプレスリリース:「関孫六 要」(貝印公式ページ)

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【 関孫六 要 - 個人的に思うこと 】

「旬」に関しては、個人的に全く食指が動きませんでしたが、「要」であれば、欲しいな…。とは思います。

ただ、これを買ってしまうと、「包丁を巡る旅」が終着を迎えてしまうかもしれないので、「買ってはイケナイ、買ったらオシマイ」…と、もう一人の私が囁いています。

追記:関孫六がおすすめの理由

当サイトのおすすめ包丁の中には、貝印の「関孫六」ブランドが多数登場しています
なぜ「関孫六」がおすすめなのか、簡単に説明しておきましょう
  1. スケールメリットの強み
    国内最大の刃物会社であり、世界的に見てもトップクラスであるため、スケールメリットを活かした包丁製造を行っている
    そのため、同じ鋼材で同一構成の包丁を作っても、他社より安くすることが可能
    まとめて一度に大量に製造することで、一本あたりのコストを抑えている。なおかつ、大量に販売することで、一本あたりの利益が少なくても、充分商売として成立している
    一言でいうとコスパが良い。「競合他社が潰れてしまうのではないか?」と、余計な心配をしたくなるくらい、コスパが良い


  2. マニアも頷く鋼材の選択
    基本的にバランスの良い鋼材を選択している。むやみに硬い鋼材などは敢えて避け、採用していない ツヴィリングとは対象的である
    このあたりは実際に使う人のことを考えた設計となっており、MISONOと同様に包丁の本質を外さない製品づくりをしている
    硬さだけではなく、研ぎやすさと刃こぼれのしにくさも重要な要素であると考えていることが、製品から伝わってくる

  3. ラインナップが実に豊富
    包丁のラインナップが多種多様に渡っているため、(適切な選択をすれば)自分に合った一本を必ず見つけることができる
    関孫六ダマスカスや、関孫六匠創のような、売れ筋包丁が利益をしっかり出しているおかげで、関孫六10000CCや、関孫六桃山のような、単体で利益を出しているとは思えない不人気商品も、ラインナップ落ちせずにいられる

  4. 店頭陳列率とブランド認知度が、共にトップクラス
    消費者からの信頼が厚いため、商品外観に頼った製品造りをする必要がなく、「中身で勝負」の製品が多い
    また、キッチン用品全体も手広く扱っているため、包丁単体で無理に利益をひねり出す必用がない(そのため、質実剛健の良心的な造りの包丁が多い)

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その他の包丁ブランド - 目次

  1. 包丁のブランド(メーカー)について
  2. 関孫六・旬(貝印)
  3. ヘンケルス Henckels
  4. ツヴィリング Zwilling
  5. グローバル(吉田金属)
  6. 藤次郎
  7. ヴェルダン(下村工業)
  8. ビクトリノックス Victorinox
  9. Misono
  10. ギャラクシー(ダイソー・100均)
  11. Gサカイ
  12. グレステン(ホンマ科学)
  13. MAC(マック)
  14. 関虎徹(安田刃物)
  15. 京セラ
  16. KASUMI(スミカマ)
  17. ヤクセル
  18. パール金属
  19. ヴォストフ Wusthof
  20. オピネル Opinel
  21. ティファール T-fal
  22. マイヤー Meyer
  23. アムウェイ Amway
  24. スーパーストーンバリア包丁

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