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グローバル - 包丁ブランドの解説(3)

最終更新日: 作者:月寅次郎

グローバル包丁・ハンドル

グローバル(吉田金属) - ブランド化に走った異才

グローバルの包丁は、モダンなデザインの一体型ハンドルで一世を風靡しました。モダンな外観に惹かれて買う人も多く、いまだに高い人気を誇っています

どちらかというと外観デザイン重視型で、低価格帯の製品はあえて出さず、さらに割引もしていません(ブランドイメージ維持のためと思われます)

デザイン優先のために犠牲となっている部分も多々ありますので、そのデメリットを知る人からは、あまり好まれない傾向もあります

例えば、デザイン上のアクセントとなっているハンドルのディンプルは、(洗わずに使い続けると)びっしりと汚れが溜まってしまうという代物です。
冒頭の画像はその例ですが、あまりに汚いためモザイクをかけています。(モザイク無しの画像は、拙著「 オールステンレス包丁の真実 」でご覧ください)

オールステン包丁は、継ぎ目がないから衛生的!といった謳い文句を通販ページに載せている業者も多いですが、これには呆れるところです

オールステンレス包丁のデメリットについては、こちらのページで解説しています

決してコスパの良い包丁ではなく、どちらかというと(むしろ、はっきり言うと)コスパの良くない部類の包丁です
消費者目線というよりも、売るため目線でマーケティングされています。見方を変えれば「ブランド化が上手だ」とも言えるでしょう

もともと海外販売を重視している会社ではありますが、ドバイにショールームでも作って、アラブの大金持ち相手にどんどん売り込んで外貨を獲得し、日本経済に寄与して欲しいものです。

「寒い時期に、金属ハンドルは握りたくないよね(朝は特に冷たいから)」というのは、四季がある日本だから言われることです 中近東なら決して言われないから大丈夫です

グローバル包丁・ハンドル

グローバル 今昔物語 - 「見た目で財布の紐を突破作戦」

包丁は、鍋と同じく買い替え需要の発生しにくい商品であり、今使ってる製品がダメにならない限り、なかなか買い換えないものです

ステンレス刃物鋼が主流になって以来、特にこの問題は顕著になっていましたが、グローバルはこの難題を安々と突破したとして、業界内から注目を浴びました
他の包丁メーカーは、指を咥えて黙って見ているわけにもいかず、こぞってオールステンレス包丁をラインナップに加えることになります

そういう意味では包丁業界の見えないベールを切り裂いた、鏑矢のようなブランドでもあります

インスタ映えするようなデザインと魅力的な外観さえ整えば、(コスパが少々悪かったとしても)固く締まった消費者の財布の紐をいとも簡単に断ち切ることができるという事実は、包丁販売の新たなマーケティング手法として、刃物業界に衝撃を与えました
(このあたりは、ダマスカス包丁のそれと良く似ています)

競合他社も、指を咥えて黙ってはいない

競合他社も「見た目で財布の紐を突破作戦」を模倣したいのはやまやまでしたが、外観デザインや意匠を似せてしまうと法的問題に発展しかねないため、ここで「大人の戦略」を取りました

グローバルが「格好良いが、値段も高い」というブランド戦略を取っている点を逆手に取り、同じオールステン構造にして購入しやすい戦略的価格を付与し、「オールステン低価格包囲網」の布陣を敷き、グローバルの牙城を崩しにかかりました

同じデザインで攻められないなら、低価格品でシェアを取り崩してしまおう作戦」です(下村工業の「ヴェルダン」や、関孫六の「匠創」が、この戦略で攻めに攻めています)

なぜ値引きしないのか? それは「ブランド」だから

改めてグローバルという包丁を見てみると、良くも悪くも「ブランド」であることがわかります
身近な台所の「道具」であるにもかかわらず、六本木にショールームを構えている点からも、グローバルのブランド戦略の力の入れ方がわかるというものです

「そんなテナント代の高いところに店を構えると、包丁の価格を高くしないと商売が成り立たないではないか?」というのは言ってはいけない一言です
なぜなら既にそうなっているからであり、それこそが、グローバルの商売上の戦略だからです

日本橋木屋も、「日本橋」という一等地に店を構えています。ブランド化は決して間違った戦略ではありません。名の通った和包丁の世界は、ブランド戦略の鎬の削り合いです。

洋包丁の世界では、それまでブランドパワーでゴリ押しするような大手刃物会社があまり見られなかったというだけです(製品としての優劣はさておいて、経営戦略としては素晴らしい決断だったと言えます)

グローバルは包丁のロールスロイス…、本当か?

秀逸なデザインと高い値段を付与すれば、消費者はそれだけで喜んで買ってくれることがあります
どうかすると、「価格が高いから、素晴らしい商品にちがいない」と、勝手に誤認してくれて、「グローバルは、包丁のロールスロイス」とか言って持ち上げてくれたりもします

流石にそれは言い過ぎだと思うのですが、これは一体誰が言い出したのでしょう?聞いていてこちらが恥ずかしくなります

追記:後で調査したところ、どうやらこの台詞は、フードスタイリストの「マロンさん」が発祥元らしいということが判りました
よく考えてみれば、「実用性は低いのに、無駄に高い」という点では、確かにロールスロイスとよく似ています
恐らくこれは、そこまで深く考えた上でのマロンさんの発言なのでしょう
(スゴイぞ!マロンさん!)

ブランドは、ブランドであり続けなければならない

一時期な流行は、それが過ぎると途端に廃れることがあります
流行が過ぎ去った後で「それ」を使っていると、逆にダサく感じられるからです

「穴あき包丁」は既にそうなった感がありますが、オールステン包丁は、果たして同じ道を辿るのでしょうか?それとも、確固たる市民権を得るのでしょうか?

グローバルがそのブランド力を確立してから、すでに数十年以上が経過しています
ブランドとは怖いもので、一度作り上げてしまうと、安易に方向性が変えられません

エルメスは永遠にエルメスで、ティファニーは永遠にティファニーであり続けるしかないのです

王様は裸だ」という在野の一言で、それまでの世界が変わる事があります
グローバルがこれからもグローバルであり続けるのか、興味深く見守っていきたいと思います

※ 当ページに書かれているのは、あくまで刃物好きの包丁マニアとしての、個人的な印象です(絶対的なものではありません)

人の価値観はそれそれです
自動車の世界でも、エアロパーツをゴテゴテ装着して車高を極端に落とした車を、「かっこいい」と思って乗っている人がいる一方で、「恥ずかしい・みっともない」と思う人も存在します
それと同様に、価値には多様性が存在します

このページに書かれていることは、単に一方向から見た個人の意見です(多人数の意見をまとめて集約したものではありません。あくまでも一つの参考として捉えて下さい)

追記:「個人の意見です」とは書きましたが、「海外での評価」を調査しているうちに、決して偏った意見ではなく、むしろ多数派の意見であると考えるに至りました

少なくともそれなりに包丁に見識の有る人にとってはそのようです
詳しくは、後述の「グローバルのインプレ・レビュー」をご覧ください

グローバル包丁、評価・評判

グローバルの評価について、興味深いレビュー投稿を見つけました

とある刃物系フォーラム(英語)で「Global's any good?(グローバルのどこが良い?)」という問いかけがあり、これに100件近いレスが付いていたのです

逐一読んでみると、まあ面白い!
日本語にするのがためわれるような、あんな表現やこんな表現が、赤裸々になされています
外国人の方って、ダメなものはホントに糞味噌に言うんですねぇ~

全部で60コメントを日本語に訳しましたが、すべて掲載すると長くなるので、全文はこちらのページ、グローバル包丁のレビュー - 海外での評価は? にまとめておきました(全文はそちらでご覧ください)
ここでは印象に残った12件の投稿のみ紹介したいと思います

グローバル レビュー・評価

グローバル包丁のインプレ・レビュー

Q :Global's any good?
質問:グローバルはどこが良いの?
以下、Answer(回答)が、延々と続きます

Nope.
(良いところは)無い。
(「無えよ~」といったニュアンスです。この一言で済ませる人も多々いました)

They're great, unless you wanna cook with 'em.
グローバルは素晴らしい! それで料理をしなければ…だけどね。

20 dollar Mercer from amazon is better
amazonで20ドルで買える「Mercer」の方が良い

Only global I love is the fish bone pick!
グローバルで良いのは、魚の骨抜きだけ!

Had them, hated them. The handles suck with wet hands, working with fish or a slippery chayote ie is a nightmare. I'd much rather have the reliable utilitarian victorinox fibrox. Its not magical 10000 fold Japanese steel or as pretty.
持ってたけど大嫌いだった。
手が濡れた状態だとハンドルがクソ。滑りやすい魚やチャーテ瓜を切る時は悪夢。
ビクトリノックスのフィブロックスの方が信頼できて実用的、こちらの方がずっといい。
折り畳み鍛錬を10000回施した日本鋼のように、魔法のような切れ味も無ければ、美しくもない

One thing that put me off after using them for 6 months as a young chef, the handles are a killer if you're doing long or heavy work... Many many better knives out there for a better price... They once looked the part, it was fashionable for a time to have them but not the best
若手シェフ時代に半年使って一つ気になったのは、長時間や大変な作業だと「手が死ぬ」こと。グローバルよりも安く買えて良い包丁は、もっともっといくらでもある。
一見ファッショナブルで、買った時にはよく見えるかもしれないが、決してベストじゃない。

I heard they are slippery. Sous at my work collects knives. He showed me his 10yo global 8" chef knife and sure enough, it's slippery even with dry hands.
滑りやすいと聞きました。
職場のスーさんが包丁コレクターで、彼の8インチグローバルシェフナイフを見せてもらったけど、ホントにそうだった。乾いた手でも滑るのよ。

グローバル レビュー・評価
Shitty handles
クソのようなハンドル

No good for me.. the handle is bad and you need to sharp evry day
私にとってはダメ。ハンドルが悪く、毎日研ぐ必要がある。

Not a fan, personally, but they do have a good reputation
個人的に好きじゃないけど、評判はいいんだよね

Decent steel but I HATE, HATE, Hate the integral handle design with dimples. Very slippery, if not borderline dangerous if your hands get greasy.
鋼材はまともだけど、くぼみのある一体型ハンドルのデザインが嫌い、嫌い、だ~い嫌い!
油が付いた手で扱うと「危なくて使えない」とまでは言わないが、非常に滑りやすい。

Many non-slip dimples tend to collect dirt and require brush cleaning. And even though the entire grip has a lot of dimples, it becomes slippery with only a little oil. It has a good reputation for its beautiful styling, but its form does not fully satisfy its functional requirements.
滑り止めのディンプルに汚れが貯まる傾向があり、ブラシで清掃する必要がある。
また、グリップ全体にディンプルが多数あるにもかかわらず、少しのオイルで滑りやすくなってしまう。
スタイリングの美しさには定評がありますが、そのフォルムは機能的な要求を十分に満たしているとは言えない。

翻訳を終えた感想

"dislike"や"do not like" といった「好きではない」という表現ではなく、嫌悪的な意味合いを持つ"hate"を使って表現している人が多い点が印象的でした

また、ヘイト系コメントに数多くの「イイね」が付いており、賛同者も多いことが伺えます
「Fワード」こそ使われていませんが、ゴミカスのような言われようです

日本製の包丁は総じて高い評価を受けるのが普通ですが、これだけ貶されるのも珍しいです

全文はこちらのページにて掲載しています。グローバル包丁のレビュー - 海外での評価は?

グローバルの包丁 を見てみよう

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あわせて読みたい、オールステンレス包丁の解説ページ


オールステンレス包丁は、滑る・冷たい・汚れが溜まる

グローバル包丁のレビュー - 海外での評価は?

オールステンレス包丁の折損問題

● オールステンレス包丁 関孫六 10000ST

● オールステンレス包丁 関孫六 匠創

その他の包丁ブランド - 目次

  1. 包丁のブランド(メーカー)について
  2. 関孫六・旬(貝印)
  3. ヘンケルス Henckels
  4. ツヴィリング Zwilling
  5. グローバル(吉田金属)
  6. 藤次郎
  7. ヴェルダン(下村工業)
  8. ビクトリノックス Victorinox
  9. Misono
  10. ギャラクシー(ダイソー・100均)
  11. Gサカイ
  12. グレステン(ホンマ科学)
  13. MAC(マック)
  14. 関虎徹(安田刃物)
  15. 京セラ
  16. KASUMI(スミカマ)
  17. ヤクセル
  18. パール金属
  19. ヴォストフ Wusthof
  20. オピネル Opinel
  21. ティファール T-fal
  22. マイヤー Meyer
  23. アムウェイ Amway
  24. スーパーストーンバリア包丁

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