自分で行うエアコン清掃の方法(手順)です。
このページでは、プロ顔負け…というよりも、プロの清掃業者が手を出さない、細かい部分まで徹底的に洗浄する方法を紹介します。
プロの業者は、エアコンを可能な限り分解せずに清掃を行います。
そのやり方が、最も労力がかからず、時間的にも早く済むからです(業者さんも、できることなら楽をしたいのです)
一方で、逆の見方をすると、「
バラさずにきれいになるのは、表面だけ」とも言えます。
徹底的に綺麗にしたい場合は、分解可能な部分は分解し、パーツ単位でバラしてしまうことです。
ラインフローファン(円筒形のファン)も一旦取り外してしまえば、漬け置き洗いにして水中でジャブジャブ洗浄可能です。
高圧洗浄機でも届かないフィンの内側まで、完全に汚れを落とすことができるのです。
【 注意 】
「エアコンの完全分解洗浄」は、分解と清掃、そして組み立ての3工程が、問題なくこなせる必要があります。
このページを一読するだけで、「なるほど、だいたい判った。この程度なら自分でやれる」となる人と…、
「一通り見たけれど、まず専門用語が判らない。ブッシュって何? VVFケーブルって?」となる人に分かれます。
現在このページを見ているあなたが、どちらのパターンなのかは、筆者からは判りません。
このページは、やや前者よりの方を想定して執筆しています。(もしくは、まだDIY経験は浅いものの、未経験の作業に挑戦する意気込みのある方です)
なお、不注意による破損、分解・組立ミスによる故障は、自己責任です。
自信のない人はプロの清掃サービスに任せましょう。
また、汚れの程度が浅い等の理由で、そこまで完全に分解する必要性を感じない場合は、適宜工程を省略して下さい。
エアコンの分解
分解作業の概要
分解によるメリット
分解することで、各パーツの細かい部分まで、しっかりと洗浄が可能となります。
電装パーツまで外してしまえば、清掃時の水の飛び散りや、残留水分の取り残しの心配も不要です。
分解できない箇所
エアコンには冷媒が使われており、室内機と室外機の間には、冷媒の通る管が繋がっています。そのため、これらの
配管は外すことができません。
配管を外してしまうと、冷媒が大気中に放出されてしまうため、
『真空引き』や
『冷媒の充填作業』が必要となります。
真空引き用の専用機械も必要ですし、冷媒も購入しなくてはなりません。そしてなによりも、冷媒の大気放出は『フロン排出抑制法』に違反します。(フロン類の充填・回収は、第一種フロン類充填回収業者が行わなければなりません)
このような理由で、
冷媒配管に繋がっている部分は分解できませんが、その他の部分は分解・取り外しが可能です。
分解・取り外しが可能な箇所
分解可能な箇所は…、
-
樹脂製の外装カバー
-
プラズマクラスターユニット
-
ドレンパン(前部)
-
ラインフローファン(円筒形の送風用ファン)
-
電装系ユニット
…となります。
逆に、取り外しできないのは、コンデンサー(アルミ製の細かいフィンの集合体)と、冷媒の配管等です。
それでは、実際の分解作業に進みましょう。
※ このページは、エアコン分解の、おおまかな流れを理解するためのものです。
実作業の細かな工程や順番については、各詳細ページに進んでご覧ください。
※ 後部ドレンパンは、今回の作業では外していません。
前部ドレンパンに比べると汚れが少なく、労力に対する効果が乏しいためです。
外装カバーの外し方
外装カバーを取り外すには…
-
エアコンを停止させ、コンセントから電源プラグを抜きます。
-
エアコンフィルターとルーバー(送風口の風向きを調整するフィン)を外します。
-
外装カバーの固定ネジをすべて外します。
ここまで行うと、
外装カバーを取外し可能な状態となります。
外装カバーは、手前に引いて外します。
(爪で引っかかっています。力任せにやると、折れたり割れたりすることもあるので、注意しましょう)
カバーが外れると、エアコンは上の画像のような状態になります。
細かい手順は省略しています。詳細解説は下のページでご覧ください。
● 詳細解説ページ:外装カバーの外し方
※ 分解作業のコツとポイント
「バラす前に、一旦画像を撮影しておきましょう」
清掃前の汚い状態で構いません。
とにかくたくさん、さまざまな角度から写真を撮っておくのです。
後で組み立てる時に、どの位置と向きで取り付けられていたのか、どちらが表でどちらが裏だったのか、など、思わぬところで役に立ちます。
構造的な視点から論理と理詰めで考えて取り付けるのもありですが、その考えに間違いがあった場合、堂々巡りに陥って、「パーツが付かない」と悩むことになります。
「元々はこう付いていた」という物的証拠を残しておくということは、非常に重要です。
メーカーのサービスマンであれば、(非公開の)様々な資料を閲覧し、組み立ての詳細を後から調べることも可能ですが、そうでない一般の方の場合は、「バラす前はどうなっていたのか?」を後で判るように残しておくことが重要です。
バラした後で「あれ、どうだったかな?」では遅いのです。
ドレンパンの外し方
ドレンパンは、前面と後面の2箇所にありますが、今回取り外すのは、前面のドレンパンです。
ドレンパンとは?
ドレンパンは、コンデンサーで結露して、流れ落ちた水滴を受け止め、ドレンホース(排水管)に流すための受け皿です。
(ドレン=Drain=排出、パン=Pan=皿)
背面コンデンサーの水は、後面ドレンパンに…、
前面コンデンサーの水は、前面ドレンパンで受け止めます。
たいていの場合、前面の方が汚れが酷く、後面はそれほどでもありません。
これは、エアフローの関係上、前面コンデンサーの方が汚れやすいからです。
ドレンパンの外し方ですが、まずは固定ネジを外して、ドレンパンをフリーにします。
ですがこれだけでは外れません。
ドレンホースと繋がっているため、ドレンホースとの接続も外す必要があります。
ドレンホースの抜け止めネジを外し、ドレンホースを抜き取ると、ドレンパンが外れます。
この機種の場合、プラズマクラスターの配線を外す必要がありますが、そのような機能の無い機種でしたら、これで充分です。
細かい手順は省略しています。詳細解説は下のページでどうぞ。
● 詳細解説ページ:ドレンパンの外し方
プラズマクラスターの取り外し
これが、プラズマクラスター発生ユニットです。
ユニット自体は嵌っているだけなので、指でパコンとやれば外れます。
ただ、配線が電装ユニットとつながっているため、接続コネクターを外す必要があります。
コンデンサーの固定を緩める
ラインフローファンを外す場合、コンデンサーの位置が邪魔になります。
コンデンサー下部の開口部を広げるために、
コンデンサーを固定しているタイラップを外し、固定を緩めます。
ラインフローファンの外し方
ラインフローファンというのは、エアコン内部にある円筒形のファンのことです。
コンデンサーの左側を固定している
白い樹脂を左側に押しやり、開口部を広げます。
すると、左側の軸受が抜けます。
ラインフローファンの左側を抜き取って、軸受から完全に外します。
右側の軸受も外して、ラインフローファンを抜き取ります。
言葉にするとこれだけなのですが、右側は少々テクニックを要する部分です。
力任せに抜こうとすると、逆に
ゴムブッシュが軸を咥えこむため、なかなか抜けない場合もあります。
エアコンで最も汚れているのは、このラインフローファンです。
コンデンサーをいくら丁寧に洗浄しても、ラインフローファンの汚れが取れていなければ、あまり意味がありません。
可能であれば、このように
円筒ファンを取り外し、漬け置き洗いで完全洗浄したいところです。
電装ユニットの外し方
電装ユニットを取り外すには…、
電源ヒューズボックスと、ルーバー用モーターを取り外し、電源用VVFケーブルを抜き取ります(黒白赤の3本)
温度計測プローブ、
コンデンサーに接続されているアース端子等、さまざまなコネクターを、一つ一つ外していきます。
すべてのコネクタが外れたら、固定ネジを外して電装ユニットを取り外します。
細かい手順は省略しています。VVFケーブルの抜き方がわからない場合は、下のリンク先の詳細解説をご覧ください。
● 詳細解説ページ:電装ユニットの外し方
電装系を取り外すメリット
電装系を外すのは面倒ですが、取り外してしまえば、いくら高圧洗浄をかけても、水がかかることはありません。
電装系を外さずに洗浄する場合、電装系に水がかからないよう、かなり念入りに養生をする必要があります。
また、電装系を外すことで、コンデンサー右側の余計なものがなくなりますので、
さまざまな角度から、コンデンサー全体をしっかり洗浄することが可能になります。
筆者は分解作業が得意ですので、電装系を外す方法を選択しましたが、そうでない人の場合は、外さずに『防水養生』を入念に行って作業するのも、一つの手段です。
そちらの方が手間がかからず、時間の短縮にはなりますが、
外せるものは外した方が、より確実に、隅の隅まで洗浄が可能となるのは自明です。
電装系を外さずに洗浄する場合
電装系を外さずに洗浄する場合は、
電装系に水がかからないよう、ビニールシート等できっちりと養生し、テープ等で隙間を塞いで密閉しましょう。
もちろんその場合でも「
水は、わずかな隙間からでも入ってくる」ということを念頭に置いておきましょう。
モーターハウジングの合わせ目、ファンの軸受の穴などは、奥まって見えないくため、見落としがちな部分です。
こういった部分も、テープを貼るなどして、シールしておきましょう。
(筆者はこれを怠ったため、何箇所かに水が溜まり、キッチンペーパーで吸い取って処理する羽目になりました)
洗浄後は養生を剥がし、水の飛沫がかかっていないか、目視でよく確認します。
(とは言っても、電装基盤はケースに覆われていることが多く、基盤に水が付着しているかどうかまでは、ケースを開けてみなければ判らないことも多いです)
電源ケーブルを繋ぐのは、できれば1日以上おいてからにしましょう。
(万全を期して、細かい部分に残った水分が、完全に蒸発するまで待ちたいところです)
なお、電装系を外さずに洗浄する場合でも、
コンデンサーのアース線と、温度プローブは、コンデンサーから一旦外しておきましょう。
(難しい作業ではありませんし、付けたまま洗浄すると、接点や管の中に水が残りやすい箇所です。もちろん洗浄・乾燥後の再接続は忘れずに!)
水濡れに起因する電装系トラブルについて
水濡れや水没、結露等、水分の付着で電装系が故障するのは、『濡れたから』ではありません。
濡れた状態で電源を投入した結果、通電と同時にショート(短絡)が発生し、電子部品に想定を超えた過剰な電圧がかかって壊れるのです。
スマホの水没もそうですが、濡れた状態では通電せずに、完全乾燥するまで待ってから電源を投入すれば、故障する可能性は極めて低くなります。
(完全乾燥しても復旧しないのであれば、それは電源投入状態で水没し、その時点で既に短絡が発生したためと思われます)
そもそも、基盤や抵抗、ICチップ、コンデンサー等の電子部品は、ほぼ密閉構造になっており、単体では水濡れに強いものです。
エアコン分解のポイント
-
各パーツを取り外す前に、一度画像を撮影しておく
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(必要であれば)取り外し中の画像も撮影する
-
外した小パーツやネジ類は、小皿に分けて分類する
それがどこに装着されていた、何のネジ(パーツ)なのか、後で判るようにしておく事は、DIY作業において極めて重要です。
(必要であれば、メモを取っておきましょう)
自分の記憶力を過剰評価して、細かいことを面倒くさがる人に限って、後でネジが余ったりするものです。
また、
ネジ径とピッチが同じでも、ネジ長が異なる場合もよくあります。
その場合、きちんと締結できなかったり、いっぱいに締め込んでも、ネジの頭が飛び出たままになったりします。
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エアコンの機種 (このページに掲載の製品)
メーカー:シャープ
型式:AY-E22DH