月寅次郎のサイト

三徳包丁と牛刀は、どちらがおすすめ?

最終更新日: 作者:月寅次郎
三徳包丁
包丁選びのポイントとして、よく挙げられるのが、
三徳包丁と牛刀は、どちらを選ぶべきか?」という問題です

三徳包丁にも牛刀にも、それぞれの良さがあり、メリットとデメリットが存在します

一言で言うと・・・
一本で済ませるなら三徳包丁、ペティナイフと併用し、セットで使うなら牛刀です
さらに付け加えるならば・・・
それほど料理をしない場合は三徳包丁、正面から料理に向き合うならば牛刀です

三徳包丁は一本で何でもこなせる汎用性がありますが、見方を変えると、
それぞれの用途に特化した専用包丁には、どの分野でも負けてしまう、中途半端な包丁
 ・・・と、言えなくもないのです

ですので、料理が好きな方や、切り方にまでしっかりこだわる方であれば、牛刀をおすすめしたいところです (だからといって三徳包丁がダメなわけではありません)

月寅次郎が使っている包丁の一覧はこちらです

ツイートボタン

三徳包丁と牛刀は、どちらがおすすめ? - 目次

  1. 家庭で使いやすい三徳包丁、プロが好む牛刀

  2. 三徳包丁が肉・魚・野菜のどれも得意というのは本当か?

  3. 三徳包丁のメリット(得意分野)

  4. 牛刀のメリット

  5. 牛刀のデメリット

  6. 三徳包丁のデメリット

  7. 結論 - 三徳包丁と牛刀は、どちらがおすすめ?

家庭で使いやすい三徳包丁、プロが好む牛刀

三徳包丁の特徴

ヴェルダン
三徳包丁

冒頭で、1本の包丁ですべて済ませる場合は、三徳包丁がおすすめといいましたが、まさにこの通りです

三徳包丁は汎用性に富む包丁です。これ一本あれば、大抵のことはできてしまいます
「万能包丁」という商品名で販売している会社もあるほどです
(ただし、後述のように「できる」と「やりやすい」は、別の話です)


刃渡りは通常16.5cm(5寸5部)であり、このサイズ感が絶妙で良いのです
(18cm/6寸の三徳包丁を販売しているメーカーもあります。15cm/5寸になると「小包丁」と呼ばれます)
この刃渡りであれば、長すぎて持て余すこともないですし、リンゴの皮をくるくる剥くような「剥き物」にも対応可能です

これ一本でさまざまな料理に幅広く対応できますので、「最初の一本」としては三徳包丁がベストの選択です

三徳包丁がおすすめのケース

  • 最初の一本として、包丁を買う場合
  • 包丁の費用を安く抑えたい場合(一本で済む)
  • 包丁を何本も使い分けるのが面倒
  • 包丁の収納スペースが限られている(キッチンが狭い)
  • 単身者、大学生の一人暮らしなど、そもそもあまり料理をしない
  • 手が小さいので、包丁も小さめが好み

牛刀の特徴

牛刀+ペティナイフというように、複数の包丁を用途に合わせて使い分ける場合は、牛刀がおすすめです

簡単に言うと、料理に凝りたい方や、切り方(刃の入れ方)までこだわりたい方は、最初から「牛刀」を買った方が良いです

三徳包丁が肉・魚・野菜のどれも得意というのは本当か?

三徳包丁は、日本発祥の包丁の形状であり、西洋には元々このタイプの包丁は存在しません
ですが近年では、日本の包丁が世界的に評価されるようになるにつれ、「SANTOKU」という名称で海外でも販売されるようにもなりました

三徳」という名称は、肉・魚・野菜の3つの食材をすべて扱えるため、三つの徳があり、これを縮めて「三徳」という由来となっています

しかしこの三徳包丁、本当に肉・魚・野菜のどれも得意かというと、実はそうではありません
肉と魚については、「やや不得意」だと言っても良いでしょう

肉と魚に関しては、やはり先が尖っていた方がいろいろと使いやすいのです
こちらの、サバキ包丁(骨スキ包丁)の解説でも触れていますが、どこまで踏み込んで料理するかで、最適な包丁は変わってきます

現代の台所事情では、肉も魚も「パック入りの切り身」で売られていることが多く、包丁で肉を切り分けたり、魚をさばいたりすること自体が少ないのが現状です

そのため、魚をさばいたり、骨付き肉を切り分けたりするなど、少し踏み込んだ料理をするのでなければ、三徳包丁のデメリットは、家庭ではそれほど顕在化しないのも事実です

三徳包丁については、「肉・魚・野菜のどれも得意!」とだけ書いて、そこから先に踏み込んでいないサイトも多々見られます
そのようなページを見つけたら「実は包丁に詳しくない、素人さんレベルの人が書いている記事」だと思って、ほぼ間違いありません
「底が浅いコンテンツ」は、読めば判ると思いますが、ネットで拾った知識の寄せ集めでしかなく、読むに値しません

関孫六10000CL
上の画像は、わたしが使っている三徳包丁(関孫六10000CL)です
手をかけてカスタムしており、口金は磨いて鏡面仕上に、ハンドルは漆塗りで仕上げているため、市販の状態とは若干色味が異なります
カスタムの手順と詳細については、上記リンク先ページにて解説しています

三徳包丁のメリット(得意分野)

三徳包丁のメリット(得意分野)は…
  • 野菜の千切り
  • 豆腐の賽の目切り
  • 刃幅が減ってもバランスが崩れにくく、長く使える
  • 初心者でも研ぎやすい
 …です。
それでは、それぞれの項目について解説してみましょう

野菜の千切り

関孫六
10000CL
三徳包丁

三徳包丁は、刃幅が充分にあるため、野菜の千切りに向いています

特に、キャベツを千切りにする場合などは、添える方の指が包丁の側面をスムーズにスライドできるため、実に切りやすいです

まな板の上で「タタタタタン!」と、続けざまに切る場合には、この刃幅の広さがメリットとして活きてきます

ちなみに同じ野菜でも、「二つ割り」や、大きめの「乱切り」にするなどは、指を「猫手」にして添える必要がありませんので、このメリットはさほど活きません
(牛刀でも構わないと言えるケースです。野菜であればすべて三徳包丁が有利かと言うと、必ずしもそうではありません)

豆腐を切る場合も、三徳包丁が有利

源虎徹
菜切り包丁

また、三徳包丁に確実な優位性があると言えるのが、「豆腐のさいの目切り」です
これは完全に、三徳包丁に分があります

刃幅の短い包丁でも切ることはできますが、刃を降ろした後に引き上げる際、峰の角が当たって豆腐が崩れやすく。そして何より、切りやすさが違います(手早くやると、手の上から落ちることも)

掌の上でプルプルと震える豆腐を、サクサクと手際良く賽の目切りにするには、刃幅があって刃筋がストレート基調の三徳包丁の方が有利なのです (実際にやってみるとよく判ります)

麻婆豆腐をきれいに作りたい方や、味噌汁に豆腐をよく入れる方なら、こだわりたいポイントです

ちなみに、三徳包丁よりもさらに切りやすいのは、「菜切包丁」です
刃筋の反りが少ないので、垂直におろすだけで確実に切れますし、先端まで刃幅が広く四角い形状ですので、手早く豆腐を切っても崩れません
菜切の形状は、左上の画像で判ると思います。画像が表示されない場合は広告ブロッカーをOFFにしてみてください)

小包丁なら、三徳包丁と同じ刃幅

そんな細かいことにこだわらなくても…」 という方もおられるとは思いますが、角の崩れたグズグズな豆腐で麻婆豆腐を作っても、見た目も味もよろしくありません
料理の仕上がりにこだわりたい場合は「常に最適な包丁を選択する」ことが重要ポイントの一つです

既に牛刀も持っており、「たかだか豆腐のために三徳包丁を買い足すのは…」という場合は、下の画像のような低価格の小包丁を買えば、それで充分です
刃幅が三徳包丁と同じで、刃渡りがほんの少し短いだけですので、豆腐を切るにはもってこいです

小包丁
下村工業
村斗 Sharp


関孫六

上の画像は、わたしが実際に使っている小包丁、ヘンケルスのセーフグリップです
これ以外で価格が安く、おすすめできる小包丁としては、ヘンケルス「ロストフライ」関孫六「茜」、さらには下村工業「村斗Sharp」あたりが挙げられます

ロストフライは靭性の高い鋼材を使っているため、冷凍食品を切る場合に「低温脆性」が比較的生じにくく、安心して切ることができます。刃こぼれも出にくいですので、手荒な作業にも耐性があり、台所のさまざまな汚れ役を担ってくれます
ヘンケルス包丁の使用鋼材『X50CrMoV15」』の特徴については、左記のリンク先ページで詳しく解説しています)

「村斗 Sharp」は、「AUS10」という比較的炭素量の高い鋼材を使用しており、低価格でありながら高硬度鋼材特有の冴えた切れ味と長切れが特徴です
硬度が高い分だけ靭性は低いですので、前述のような低温脆性には弱い方です。手荒に使うのではなく優しく丁寧に扱うべき包丁です

このように「ロストフライ」と「村斗 Sharp」は、正反対の傾向を持ちます。どちらが良いというものではありませんので、自分の用途や目的に合っている方を選ぶと良いでしょう

「村斗 Sharp」は少々硬すぎる、「ロストフライ」は刃持ちがいま一歩。…と、感じる方には、関孫六「茜」という選択肢があります。硬度も靭性も適度でバランスが取れており、この2つの包丁のおおよそ中間のあたりの特性を持っています
これはこれで、どこかに突出した部分はありませんが、欠点の少ない優等生的な包丁です

三徳包丁、その他のメリット

刃幅があるため、研ぎ減ってもバランスが崩れにくい

三徳包丁は、刃幅(刃の高さ)が充分にあるため、使い込んで少々研ぎ減ってきても、刃渡り自体はさほど変わりません
刃幅は変わっても、刃渡りはあまり変わらないので、使いやすいバランスを維持しやすいです

牛刀は刃幅が短いですので、使い込んで刃が減ってくるにつれて、刃の長さが顕著に短くなってきます
ペティナイフのようになってしまうと、刃渡りに不足が生じ、なんとも扱いにくく感じることがあります

そういう意味では、実はお買い得な包丁が三徳包丁です

※ このポイントは、包丁をほとんど研がない人にとっては、何の意味のないことでもありますので、それほど気にする必要はありません

刃幅があるため、初心者でも研ぎやすい

三徳包丁は刃幅サイズが広めですので、砥石で研ぐ際に、指で押さえやすいのが良いところです
このため、三徳包丁は初心者でも比較的研ぎやすいのが特徴です

結局のところ、包丁の切れ味は、「砥石できちんと、定期的に研いでいるかどうか」で決まります
わたしのように、砥石を10本以上とっかえひっかえして研ぐようなマニアは別として、家庭内一般使用であれば、「どの包丁を選ぶか?」よりも、「定期的に、きちんと研いでいるか?」が決定的な要素となり得ます

ですので、「砥石で研げるかどうか?」は、「優れた切れ味」に直結する重要な要素です

初心者でも比較的研ぎやすい「リーズナブルな価格の三徳包丁」を最初の一本として選び、それを使って研ぎ方を身に付け、熟練度を上げてから牛刀を買い足すというのは、理想的なステップアップです(わたしもこの道筋を辿りました。なんなら最初の一本は小包丁でも構いません)

ペティナイフ

ビクトリノックス
スイスクラシック
ペティナイフ 赤

上の画像のように、刃幅が短いパーリングナイフ(ペティナイフ)を研ぐ場合は、指を当てるスペースが少ないので、少々研ぎづらいものです
慣れている方であれば、難なく研ぐことができますが、初心者の方の場合は、砥石で指を擦りそうになるため、比較的難しく感じられることでしょう

このような研ぎづらさを感じることなく、包丁の腹に指をしっかり当て、ぐんぐんと押し込んで研げるのが三徳包丁です

「包丁研ぎ」を習得して、何でもスパスパ切ってみたいと思う方は、(回り道のように思えるかもしれませんが)『小包丁』の解説で取り上げた、ヘンケルス「ロストフライ」や関孫六「茜」のような、廉価な包丁で練習するのが近道です
高級包丁は高硬度鋼材を使用していますので、はっきり言うと刃が付けにくいです。そのため、包丁研ぎの練習にはあまり向きません。低価格の包丁であれば、砥石との相性などを考える必要もなく、短時間でさっと刃が付くため、初心者にも研ぎやすいです

砥石については、わたしが実際に使っている砥石をご覧ください

上の画像の細身のペティナイフの名称は、ビクトリノックス スイスクラシック ペティナイフ と、言います

とても低価格なキッチンナイフですが、上手に使えば、他の包丁では真似のできない「台所の便利道具」になり得ます
リンク先ページを参考に購入された方が、取り回しの良さと使い勝手の良さに感激し、「買ったその日から、使わない日はありません」と、わざわざ連絡をくれたほどです
(特性と使い方を理解しないと、「細身・アゴ無し」は、ただの使いにくいナイフにしかなりません
興味のある方は、こちらの 解説ページ に良く目を通すことをおすすめします

包丁の研ぎ方

包丁を研ぐのは、決して難しいことではありません
最初は思い通りにいかないかもしれませんが、自転車と同じで、一度できるようになれば、その技術は一生役に立ちます

わたしが実際に研いでいる様子は、下の動画で見ることができます


※ 解説は字幕で補足しています。日本語字幕をONにしてご覧ください
でないと、単に手を前後に動かしているだけの動画にしか見えません

研ぎ音がよく聴こえる音量で、大きめの画面で視聴すると、「何をどう研ごうとしてるか?」が判ると思います
月寅次郎チャンネル (YouTube 動画一覧)は、こちらです(「いいね」をもらえると嬉しいです!)

牛刀のメリット

牛刀

牛刀の形状的特徴は…
  1. 刃渡りが長い
  2. 刃幅が短い
  3. 刃先が尖っている
  4. ローリング切りが可能な刃筋のカーブ
…の4点ですが、これはそのまま牛刀のメリットとなり得ます

では、牛刀のメリットとは何かというと…
  • 長い刃渡りを生かし、引き切りすることで冴えた切れ味を出せる
  • みじん切りが素早くできる
  • 刃幅が短いため、刃を回しやすい
  • 薄く鋭い刃先は、器用に使える
  • 「ローリング切り」がやりやすい (ロッキングモーション)
 …などが挙げられます

※ 「細く長く、先端が鋭い」という刃体形状が、まな板の上でどう活きるかがピンと来ないのであれば、無理に牛刀を使う必要はありません
単に、刃渡りの長い包丁を使っているだけであり、牛刀の良さを活かしきれないことになるからです

ちなみに、個人的に使っている牛刀は、日本橋木屋の牛刀(Misono製)と、梅治の牛刀です

ミソノの牛刀(スウェーデン鋼)の方は、薄くしなやかな刃体で、高い硬度を出すことだけにとらわれておらず、秀逸なバランスで整えられています
刃をぎりぎりまで薄く抜いているため、切り抜け抵抗が低いのが特徴です
刃先硬度だけを優先させたような包丁も多いですが、それとは対極にあるような、「抜け」の良い玄人向けの牛刀です

梅治の牛刀は、武生のV1鋼材が使用されており、カチッとした使い心地で、これもまた申し分ありません。 どちらも素晴らしい包丁です

※ ミソノの牛刀は非常に気に入ったため、後日手をかけてカスタムを施しました
カスタムの詳細については、日本橋木屋の牛刀・Misonoブレードのカスタム のページをご覧ください

刃渡りの長さは、切れ味につながる

Misono
UX10

「刃渡りが長いと、大きい食材を切れる」とも言えますが、それはいささか短絡的だと言わざるを得ません

確かにそれはそうなのですが、刃渡りの長さが持ちうる真のメリットは、「刃渡り全体をフルに活かし、引いて切る」際に、活きてきます

柳刃包丁で冊を引く場合でも同じことが言えますが、引きながら切ることで、刃の角度が擬似的に鋭角になり、より滑らかで鋭利な切れ味を出すことができます

刺し身だけではなく、ローストビーフを薄く切る場合や、厚みのあるサンドイッチを潰さずに切る場合などに、特に有効です

そういう切り方はせずに、まな板を叩く音を高らかに響かせてばかりいるのであれば、無理に牛刀を買う必要はありません刃渡りの長さを生かしておらず、長い包丁を使う意味が無いからです

刃渡りが長いと、みじん切りがやりやすい

また、刃渡りの長さというメリットは、みじん切りをする際にもいかんなく発揮されます

牛刀独特の刃筋のカーブを活かし、前後にローリングさせるように動かすと、みじん切りを手早く仕上げることができます
刃渡りの長さが、できあがりの速さに直結する部分です

牛刀の主なサイズは、21cm, 24cm, 27cm, 30cm です
語弊を恐れずに思い切って分類すると、21cmと24cmは家庭用、27cmと30cmはプロ用と考えてよいでしょう

人によって取り回しの感覚はそれぞれですので、どのサイズがベストかは難しいところですが、家庭内使用であれば、21cmか24cmを買えば間違いありません
(できれば購入前に実際に握って確かめてみるのが一番です)

個人的には21cmの牛刀を使っています(1~2人の料理を作ることがほとんどですし、キッチンスペースもそれほど広くないため、わたしにとってはは21cmが丁度良いサイズです)

刃幅が短いと、刃を回しやすい

Misono 440
筋引 24cm

牛刀は三徳包丁に比べて刃幅が短いため、切り進みながら刃を回すこともやりやすく、自由自在に扱えます
言い方を変えると、三徳包丁は「真っ直ぐ切る」ことに長けており、切りながら方向を変える事は不得手です

※ さらに刃幅の短い包丁が良ければ、「筋引包丁」という選択肢もあります
取り回しが良く、肉の切り分けにも向いています。また、刺し身包丁の代用としても使え、玄人の方に好まれています
ただこの、刃幅が短いというのは、デメリットにもなり得ます。前述の豆腐を切る場合や高さのある葉物野菜を千切りにする場合は三徳包丁や菜切り包丁の方が向いています

ただこれらは、あくまでも、「比較するとそうなる」というだけの話しです
包丁の扱いが上手い方は、牛刀でも難なくキャベツの千切りをやりますし、三徳包丁でもそれなりに上手に刺し身を引くことができます
「弘法筆を選ばず」というやつですが、技量の確かな人が最適な包丁を使うと、最も美しく仕上がるのは言うまでもありません

薄く鋭い刃先は、器用に使える

牛刀

堺孝行
青二鋼 牛刀

肉の下ごしらえで筋を切る際や、魚をさばく際は、刃先の尖っていることがメリットになります
三徳包丁でもできないことはないのですが、やり易さに違いが出ます
出刃包丁も筋引包丁も刃先が尖っていますが、そこには意味があるのです

また、仕立ての良い牛刀は、刃先にきれいにテーパーがかかっており、先端の厚みがペティナイフ並みに薄くなっています (安物の包丁は、板のように先端まで厚みが同じだったりします)

これは、刃先だけを使って玉ねぎに切れ込みを入れる時、とても具合良く刃が入ります
玉ねぎをみじん切りにする際、手慣れた人は底部を繋げたまま切れ込みだけを入れ、90度回して一気にみじん切を作りますが、このような場合に抵抗が少なく、刃がスッスッと入っていくのです

玉ねぎのみじん切りは顕著な例ですが、それ以外にも牛刀の先端は使い勝手が良く、慣れてくると実に器用に扱えます
これに慣れてくると、逆に三徳包丁を握りたくなくなるほどです
個人的には、この刃先形状の良さが、牛刀の最も好きなポイントです

三徳包丁しか握ったことのない人は、包丁の根本付近ばかりを使い、力任せに押し込む切り方をする傾向にありますが、牛刀を握り慣れている人は、刃厚の薄い先の部分を上手に使います。

先端は厚みが薄いため、(繊細な技量を要しますが)軽い力で切り抜けますし、腕や手首を動かす量も、ほんの少しで済むのです

料理が上手で料理そのものが好きな方には、三徳包丁よりも牛刀をおすすめしたいと思います
なぜなら、それだけの価値があるからです

牛刀ならでは、「ローリング切り」

関孫六
10000CC

牛刀
刃渡りの長さと刃筋のカーブを活かすことで、牛刀特有の「ローリング切り」ができます

「ローリング切り」というのは、わたしが勝手に言っているだけで、正式には何というのかわかりかねますが、いわゆる「牛刀特有の切り方」です
追記:どうやら「ロッキングモーション」と呼ぶようです

刃の先端をまな板から離さずに、アゴだけを持ち上げて切るやり方ですね
これを華麗にやってのけると、牛刀を使っている人が実に格好良く見えます

文字表現では判りづらいですので、実際に人がやっているのを見ないとイメージしずらいとは思いますが、洋食の現場では良く見られる切り方です

刃をまな板に叩きつけるのではなく、まな板の上を滑らかに滑らせるように切りますので、刃が潰れにくくて刃が長持ちする切り方でもあります

牛刀

牛刀のデメリット

牛刀のデメリットを列挙すると…
  • まな板が小さかったり、キッチンスペースが狭いと持て余しがち
  • 手の小さい人や背の低い女性の方は、サイズ的に合わず、使いにくく感じる場合も
  • 一本ですべてをこなすのが難しい(せめてペティナイフは欲しい)
 …となります。このように、メリットはデメリットの裏返しです

牛刀の一番の特徴は充分な刃渡りがあることですが、これが裏目に出やすいのが、単身者向けのスモールキッチンです。狭小スペースでは長い刃渡りを持て余すこともあるでしょう
台所のスペースやまな板のサイズと、刃渡りが合っていることは重要です

また、長めの刃渡りが災いして、「剥き物」にはあまり向きません
できないことはないのですが、「皮を剥く」場合は、ペティナイフを用いるのが適しています

牛刀が不得手な分野は、 ペティナイフ(パーリングナイフ)を使うなどして、他の包丁で補ってあげてください

三徳包丁のデメリット

三徳包丁のデメリットを列挙すると…
  • 刃渡り全体を活かして引いて切るには、長さに不足がある(冴えた切れ味を出しにくい)
  • みじん切りの速さで差が出る
  • 刃を回しにくい(切りながら方向を変えるのが苦手)
  • 切っ先が尖っていない(筋切りや魚の腹割きなど、切り込む動きが不得手)
 …となります
つまり、三徳包丁のデメリットは、牛刀のメリットの裏返しになります

また、「剥き物」をする場合は、洋食ではペティナイフに一歩劣り、和食では薄刃包丁の後塵を拝します

冒頭で書いた通り、三徳包丁はそれぞれの用途に特化した専用包丁には、どの分野でも負けてしまうのです
とはいえ、家庭料理を一本で済ませるのであれば、万能で扱いやすいと言うこともできます

結論 - 三徳包丁と牛刀は、どちらがおすすめ?

● 三徳包丁がおすすめのケース
  • 包丁を一本で済ませたい場合や、キッチンが広くない単身者
  • 手が小さい方(牛刀だと長過ぎて使いづらいと感じる場合・女性に多い)
  • そもそもあまり料理をしない、料理自体に興味を持たない方
  • 野菜の千切りや、豆腐の賽の目切りは、刃幅のある三徳包丁がおすすめ
● 牛刀がおすすめのケース
  • 複数の包丁を上手に使い分ける料理上手の方や、仕事で包丁を使うプロの料理人
  • 長い刃渡りをフルに使って、高い切れ味を出したい場合
  • 筋を切る、切れ込みを入れるなど、鋭い刃先を生かした切り方を行う場合
  • 刺し身を引く場合は、三徳包丁よりも牛刀に分がある
● 補足
魚をよくさばく人は、サバキ包丁(骨スキ包丁)を使うのも、一つの選択肢です
鯵切り包丁や、舟行包丁も良いでしょう

牛刀と三徳包丁の違いは判ったけど、具体的にどの包丁を選べば良いのか判らない という場合は…

まず、家庭用のおすすめ包丁(安い価格で、最良の切れ味を)のページからご覧ください
包丁販売業界が怒りそうなことばかり書いていますが、これ全部「本当のこと」です
(あらかたの傾向が掴めると思います)

合わせて、おすすめの包丁(外観より切れ味重視でランキング)に、さらっと目を通すのも良いでしょう
(これらのページを統合してまとめたのが、おすすめ包丁(月寅次郎決定版)になります)

また、売れ筋で流行りの人気商品は、必ずしも使いやすいとは限りません
使う人の事よりも消費者の興味を引いて、買わせることばかりを考えている包丁もあったりします

具体例としては・・・
オールステンレス包丁は、滑る・冷たい・汚れが溜まる、と ダマスカス包丁について(本当におすすめ?)
・・・あたりが参考になるかと思います

どのページも文章長めですが、それは「包丁を愛すればこそ」です
ご自分に合った、本当に使い良い包丁を選ぶ一助になればと思います

注意書き(お目汚し失礼いたします)

※ 「キナリノ」や「サキドリ」、「マカロニ」などのライターの皆様、当ページの内容を換骨奪胎してページを作らないでください(内容を安易にパクる人が多いので、先に釘を刺しておきます。キュレーションサイトだけでなく、ユーチューバーや個人ブロガーの皆様も同様です)
わたくしこと月寅次郎は、包丁を10数本、砥石も10本程度所有しており、それぞれを使ってきた経験を元にこれらのページを執筆しています

人の経験を利用して「パクリコンテンツ」を作るのではなく、自分の経験で語りましょう
月寅次郎が使っている包丁の一覧はこちら


おすすめの包丁(外観より切れ味重視でランキング)

家庭用のおすすめ包丁(安い価格で、最良の切れ味を)

ダマスカス包丁について(本当におすすめ?)

包丁のトップページ に戻る