カーボディにブルーマジックを使う
このページでは・・・、
ブルーマジックでのクルマ磨きについて解説します
塗装面、ガラス、メッキパーツ、ヘッドライトカバーなど、車にはさまざまなパーツがありますが、それぞれの箇所に対する使用の可否や最適度、注意点などを専門的な見地から解説します
ブルーマジック - 目次
- ブルーマジックの基本 (ページ1)
- 番手・粒度・成分 (ページ2)
- 使用例と感想(鏡面仕上) (ページ3)
- 使い方上級編 ← 前のページ
- 車のボディ磨き ← 今見ているページ
- 家庭での使用 ← 次のページ
車やバイクには、シリコン入りのブルーマジック
車やバイクのパーツ磨きに、ブルーマジックはおすすめです
ブルーマジックにはシリコンが含まれていますので、
磨き上げると表面にシリコンの薄い被膜ができます
この「
シリコンコーティング」が水を弾き、表面の劣化を防止します
ブルーマジックは、元々自動車用のカーケミカルとして開発されましたので、研磨後の艶の保持にも配慮されているというわけです
カーケア用のコンパウンド(研磨用ペースト)には、シリコンが入っていないものもあります
これは純粋に、傷取りや研磨に特化したタイプの研磨材です
研磨後に塗装を施す場合は、シリコン入りだと塗料を弾いてしまうため、シリコン無配合のコンパウンドが使いやすいです(コーティング効果を持たない研磨剤が最適)
マフラーやエキパイ磨きに
マフラーやエキパイなど、熱によって酸化皮膜が生じ、黒く変色した排気管なども、ブルーマジックで根気よく磨けば、かなりきれいな状態まで戻すことができます(腐蝕による深い貫入跡が生じている場合は、粒子の細かいブルーマジックでは傷を取り切れない場合もあります。その場合はより粗目のコンパウンドを前段階として使用した方が効率よく仕上がります)
以前、バイクのパーツ磨き用として
「ヨシムラのステンマジック」を使用したことがあり、こちらも優れた商品ではありましたが、双方を比較してみると、ブルーマジックの方が安くて量が多く、確実にお得です(ワールドワイドに販売されている製品ですので、大量生産によるスケールメリットが働いているのでしょう)
「メッキにはお使い頂けません」 ← 間違い
ブルーマジックの販売サイトで、
「メッキにはお使い頂けません」と表示しているところがありますが、これは間違いです
(厳密に言うと、誤解を招きやすい、不適切な表現です)
上の画像は自動車のフロントグリルで、表面が少しくすんだ状態ですが、ここをピカピカに蘇らせるのにブルーマジックが役立ちます(画像では、グリルの上に立っているエンブレムもクロムメッキです。ここにも使えます)
ブルーマジックのラベルには「
For Chrome, Aluminum and Mag Wheels」との表示があります。
これは「
クロムメッキ、アルミ、マグネシウムホイールに使えます」という意味です。
ですので、クロムメッキの研磨に関しては問題なく使用可能です。
例外もある、金メッキはダメ
このように、クロムメッキへの使用は問題ありませんが、
「クロムメッキがOKなら、他のメッキも大丈夫だろう」と考えは誤りです。
同じメッキでも金メッキは高度が低く、メッキの厚みも極薄ですので、軽く磨いただけでメッキ自体が剥げ落ちます。
優しい面圧で触れるように磨けば、貴金属表面のくすみを除去することは可能ですが、切削能力が高めですので、配慮して使わないと失敗する可能性があります
このような用途には、最初から貴金属磨き用の製品を使用した方がよいでしょう(粒径が小さく、研磨力が穏やかですので比較的安心して使えます)
整理すると「
クロムメッキはOKですが、貴金属メッキはNG」です
「めっき(鍍金)」には、様々な種類がありますので、「メッキ」とひとくくりに扱ってはいけません。
施工してはいけないパーツ
チタン製のマフラーで、熱による酸化皮膜を利用して虹色に加工した製品がありますが、このような
酸化被膜系のカラー加工製品には、ブルーマジックを使用しないようにしましょう(皮膜が薄いので、色が剥げます)
また、ドレスアップ用のアルミボルトや、オイルクーラーのバンジョーボルトなど、表面に
酸化皮膜加工(カラーアルマイト処理)を施したものがありますが、こちらも同様です
アルマイトも、薄く柔らかい酸化被膜ですので、ブルーマジックなどの研磨剤で擦ると、地肌が露出し色が剥がれ、「
ただのアルミのボルト」になる場合があります
車のボディ(塗装面)に使えるか?
説明書きには、
「自動車やバイクの塗装面には使用しないで下さい」となっています
塗装面が侵される可能性が否定できないため、このような表記になっていると思われますが、塗装剥離剤のように、付着した途端に塗装が泡立って剥離するような、劇的反応が生じるわけではありません
ブレーキフルードや、
ワコーズ・フューエルワンなどの燃焼室洗浄剤と比較すると、まだ安全な方だと言えます
ブルーマジックの含有成分で最も影響がありそうなのは、
軽質石油留分ですが、これは簡単に言うと
ケロシンです。
灯油と考えて構いません
完全硬化後の塗装面(ウレタン塗面)に灯油が付着しても、放置することなく短時間のうちに拭き取れば特段の問題は生じません。それを考えれば、それほど大きな危険性は無いと考えてかまわないでしょう
このように、
少量かつ短時間の施工であれば、塗装面に大きな影響が出ることはありません
実際、塗装面用のコンパウンドと比較しても、基本成分にさほど大きな違いは見られません
どちらかというと、この「塗装面云々」という注意書きは、極端な使い方をするユーザーに対する免責事項であると考えるべきでしょう
そもそもブルーマジックは金属磨き用ですので、塗装面に使うものではないのですが、このように、全く使えないかと言われれば、そういうわけでもありません
※ 注意しましょう
ブルーマジックはアルミナを使用しているため、塗装面用のコンパウンドと比較すると、相対的に切削力が高めです
やみくもにゴリゴリ磨くと、トップコートのクリア塗装が剥げたり、地色やプライマーが露出する場合があります(酷い場合は「地金」が出ます。ボディのエッジラインは、圧がかかるので特になりやすいです。気をつけましょう)
塗装というのは「膜レベルの厚み」しかありません
研磨を繰り返すと、塗膜の厚みをすべて削り取ってしまう場合があります。加減の判らない人は、最初からやらない方が無難です
塗装面にブルーマジックを使用する場合は、あくまでも自己責任で行いましょう
塗装面への使用例(自動車)
上の画像は、わたしが以前乗っていた車ですが、ボディパーツを自家塗装する際、
クリアを吹く前段階の磨き込みにブルーマジックを使用しています
画像の上部2/3がメーカーによる
純正塗装、下部1/3の樹脂外装パーツが「
DIY塗装」です
この時ブルーマジックは、紺色の塗面の「ゆず肌」を除去し、平滑にする工程の一部に使用しています
純正塗装の部分には、ゆず肌が残っているため、鏡像に「ぶれ」があります(よく比べて見ると判ります)
ゆず肌を取って平滑面を出した後に、ウレタンクリア塗装を施しましたので、メーカーの純正塗装に比べると、映り込みが良好で鏡のような反射具合を見せています
ここまで仕上げることができれば、「
鏡面塗装」と言って良いレベルでしょう
ウレタンクリア塗装には、2液性ウレタンクリア(缶スプレー)を使用しました。
● 関連ページ:ウレタンクリア 2液性 (amazon 商品ページ)
※ ゆず肌を落とす作業工程は…
-
2000番の耐水ペーパーでゆず肌を落とし
-
ペーパー目(研ぎ傷)を、ブルーマジックで除去
-
ウィルソンの超微粒子コンパウンドで表面平滑度を引き上げる
…という3工程に分けて作業しています(ブルーマジックは工程の一部で、わたしの定番施行法です)
【 ご注意下さい 】
誰がやっても魔法のようにきれいに仕上がると思わないで下さい。個人の技量は人によって大きく異なります
塗装にしろ、研磨にしろ、その人にとっては「簡単なこと」であったとしても、万人にそうだとは限りません
このページを書いている当人は、自動車整備について専門的に学んだことはありませんが、それでもシリンダーヘッドのオーバーホールぐらいはこなします
他にもダンパー交換やデフオイル交換、タイロッド、エンジンマウント、燃料ポンプなど、一通りのパーツ交換や整備経験があります)
こちらのオピネル分解1 - 必要工具と準備作業や、OAチェアのガスシリンダー交換方法のページを見れば、工具の使い方や選択についても吟味していることが判るでしょう。( プロフィールはこちらです)
『研磨』については、対象素材の硬度や表面の荒れ具合に合わせ、最適なコンパウンド(もしくはサンドペーパー)を選択し、表面状態に合わせて番手を上げて行く必要があります
どの程度の面圧をかけるかにしても、決して一通りではありません
「ブルーマジックさえ使えば、何でも魔法のようにピカピカになる」と思うのは、素人考えでしかありません
もしも、そのような表現をしているページがあったとしたら、「技量と経験の浅い人」か、でなければ倫理観のない「ステマ」です(ページをそっと閉じましょう。読む価値がなく時間の無駄です)
※ サンドペーパーの番手を順次上げていく手法については、こちらの包丁のカスタム2 - 口金の鏡面仕上げ のページで詳しく解説しています
6種類のサンドペーパー(#240,400,800,1500,2000,3000番)を使い、番手を上げることで、実際に磨き目がどう変化していくかを画像で判るようにしています。この施工例では#3000番の後にブルーマジックを使用しています
塗装面への使用例(メタルケース)
こちらは、
アタックドライバーのケースをブルーマジックで磨いたところです
このメタルケースには赤色塗装が施されていますが、自動車ボディのように入念に何層も塗り重ねられているわけではなく、ウレタンクリアによるトップコートもありません
塗膜としては薄く柔らかい部類に入るでしょう
このような
デリケートな塗面の場合は、「ゴシゴシ」ではなく「スルスル」と、面圧を柔らかくして、様子を見ながら研磨する必要があります
時おり布に付着した「色」の様子を見て、この塗料の削れやすさを確認します
そうして確かめた
「削れやすさの度合い」に応じ、適切な面圧で磨いてあげると、上の画像のように、ツルテカに整った平滑な塗面を再形成することが可能です
この工具ケースは「ゆず肌」の出方が美しく、味わいがあるため、ゆず肌を削り落とさないように配慮して磨いています
実際に塗装面に使用する場合は、配慮して使用しよう
ブルーマジックの研磨剤はアルミナですので、粒子自体の硬度が高めです
実際に塗装面に使用する場合は、深く削りすぎないよう、配慮して使用しましょう
柔らかめの素材に対しては研磨力が強めに出ますので、力を込めて長時間研磨すれば、塗装面の厚みが薄くなってしまう恐れがあります
とはいえ、粒度が5ミクロンと微細なため、一度に切削できる深さが浅く、塗装面が厚く堅牢な場合はさほど問題とはなりえません。実際のところ、10~15ミクロンのシリカを使用したラビングコンパウンドの方が、(塗装面に対しては)高い研磨能力を持ちえます
これは、研磨粒子の硬度ではアルミナの方が上回るのですが、ラビングコンパウンドの方が粒径サイズが大きいため、そちらの方が物を言うというわけです
問題になりそうなケースがあるとすれば、紫外線やヒートサイクルによる劣化が目立つ塗装面、2液混合ウレタンではない、スプレー缶によるラッカー系塗料(DIY塗装)などです
塗装面への使用に対しては、「良い」と「ダメ」の二択で考えるのではなく、ケースバイケースで、安全マージンを大きめに取って望みましょう。
塗装というのはあくまでも薄い被膜ですし、金属に比べると柔らかいものです
「極端に磨きすぎると、地肌が出る」、それをきちんと理解したうえで研磨すれば、(大丈夫とは言いませんが)致命的な失敗は犯しにくいものです
塗装面もさまざま、柔らかく薄い塗装面の場合
上の画像は、
「漆塗りにした木材」をブルーマジックで磨いた実例です(ブレードの鏡面仕上げにも使用しています。詳細はリンク先をご覧ください)
金属以外の柔らかい素材を磨くというのは、ブルーマジック本来の用途ではありませんが、それでも使い方に配慮して研磨すれば、このような塗装面でも問題なく磨くことも可能です(もちろん
磨きすぎると、塗装面が剥げて下地が露出してしまいますので、ソフトに磨くなどの配慮は必要です)
※ 補足
塗装面への使用について言及しましたが、塗装にもさまざまなものがありますので気をつけましょう
例えば、ニベアクリームの缶などに施されている塗装は、柔らかく薄いため、簡単に剥がれます(粉ミルクやクッキーの缶も同様です)
塗装にもさまざまな種類がありますので、ひとくくりに捉えずに、塗膜の硬度と塗面の厚みを考慮して使用することが重要です
上の画像も同様に、
漆塗りの表面平滑度を上げる工程でブルーマジックを使用しています
本来漆塗りは、適切に施工できれば事後研磨の必要は全くありません。
(そのくらい高い平滑度を出すことができます)
ただそれには、それ相応の刷毛塗りの技量が必要であり、なかなかに難しいものです
わたしの技術では塗りムラが出ることがあるため、表面のムラを水研ぎで除去した後、サンドペーパーで生じた「ペーパー目」をブルーマジックで消し、平滑に仕上げるという工程を取っています
回り道ではありますが、誰でもできるやり方でもあります
上の画像は、黒檀材を切り出して自作した「鍋つまみ」です。
こちらも同様に
漆を塗って、最終工程にブルーマジックを使用しています。
(各工程の詳細は、下記リンク先で紹介しています)
上の画像は、関孫六4000CLペティナイフ のオリジナルカスタム品です。
ブレードと口金の金属部分は鏡面に加工し、
ハンドルには漆をかけて表面平滑度を上げ、深みのある光沢を乗せることができました。
このように、硬度の異なる素材を一度に磨く場合、柔らかい方ばかりが削れて失敗しがちです。
塗膜の地肌が出ないように目を光らせながら、慎重に研磨する必要があります。
(実際これは、なかなか難易度の高い作業でした)
ヘッドライトの黄ばみ除去に使えるのか?
結論から言ってしまいましょう
ブルーマジックをヘッドライトの黄ばみ除去に使うことは可能です
ただ、プラスチック研磨用の専用品と比較して、粒子サイズがやや大きいため、仕上がり表面の平滑感に関しては、専用品の方が分があります
(ただし研磨力に関してはブルーマジックの方が優れているため、劣化した表面の除去力を重視したい場合は、ブルーマジックに軍配が上がります)
もう少し詳しく解説してみましょう
通常、ヘッドライトの黄ばみ除去用の製品には、0.7~1ミクロンのアルミナ研磨剤が使用されています
粒子サイズがこれより小さいと、黄変した表面層を削り取るには時間がかかってしまい、大きくなると磨き傷が付きやすいためです
そういう意味では、かなり安全マージンを取って小さな粒子のものが使用されているのですが、粒子が小さいがゆえに、表面層をごく薄くしか研磨できないというデメリットもあります(深く研磨するには、かなり時間がかかります)
ブルーマジックの場合は粒子サイズが5ミクロンですので、研磨粒子が比較的大きめです
1ミクロンサイズの研磨粒子に比べると、切削力が格段に高く、
プラスチックの劣化が深いところまで進行している場合でも、非常に効果的に働きます
市販の「ヘッドライト磨き剤」では、なかなか曇りが取れないという場合には、思い切って粒度の大きなブルーマジックを使い、劣化した表面層を一気に磨き落としてしまうというのもありでしょう。
あまり宣伝されていないため、知名度は今ひとつですが、ブルーマジックにも「ヘッドライトのくもり取り用専用研磨剤」があります。
● 該当ページ:ブルーマジック ヘッドライトレンズ磨き (amazon 商品ページ)
ブルーマジックでざっくりと削り落とした後は、仕上げ工程として、
ホルツ リキッドコンパウンド極細や
ウィルソン超微粒子など、1ミクロン以下のコンパウンドを後がけすれば、平滑でツルツルしたフィニッシングが可能です(ヘッドライト専用研磨剤と同等の仕上がりになります)
この方法は、ヘッドライト専用研磨剤では、「くもり」が取り切れなかった場合に有効な、
「2段階・深磨き」です。車齢10年以上など、比較的劣化が激しい場合に試してみると良いでしょう
(より入念に仕上げたい場合は、中工程として3ミクロンの「ピカール金属磨き」を挟んで、3段階で仕上げて下さい。5μ→3μ→1μで、きれいに仕上がります)
● サンドペーパーの選び方 については、左記のページをご覧ください
有名どころのNCA(ノリタケ)、三共理化学、コバックス等について解説しています
ガラスウインドウ
ガラスウインドウへの使用は、
あまりおすすめできません
水垢がウロコ状に固着すると、取るのはなかなか厄介で、強力なパワーのある研磨剤を使用したくなるところですが、ブルーマジックを使うのは、少々考えものです
理由は2つありまして
1.シリコン入りのため、施工後の拭き取りが不十分だと、
油膜がムラになって残る場合がある
2.研磨材の硬度が高いため、力加減によっては
ガラスに傷が入る可能性が否定できない
…というものです
この2つの根拠は、それぞれ別の見方をすることも可能です
シリコンによる拭きムラが出たとしても、きれいに拭き取るか脱脂すればよいわけですし、硬度問題にしても、石英(ガラス)よりも、アルミナ(ルビー)の方が硬度が高いのは確かですが、ゴリゴリやらずに優しく磨けば、目立つような傷は入らないものと思われます
ですので、ダメと言えばダメなのですが、それは理論上の話であり、自己責任でやる分には構わないと言うこともできるわけです
(このあたりは、塗装面への施行と同様です)
とはいえ、ガラスに対しては、「
キイロビン」などの「
ガラス専用油膜除去コンパウンド」が市販されていますので、そちらを使うほうが、安全安心で確実です
(わたしもガラス磨きには「キイロビン」を使用しています)
キイロビンの研磨材には酸化セリウムが使われています。酸化セリウムはガラスを磨くのに適しており、光学レンズの研磨にもよく使用されます
これは単に削るだけでなく、ガラスの二酸化ケイ素と反応して、表面の微細な凹凸を埋める働きを持つからです
ちなみに、酸化セリウムのモース硬度は6前後、これに対し、ブルーマジックの研磨成分であるアルミナは、モース硬度8~9となり、ブルーマジックの方が硬度が高く研磨力が高いといえます
月寅次郎の本(著作)
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